COLUMN
2026.06.03|整骨院マーケットレポート
シリーズについて
このレポートは「47都道府県 整骨院マーケットレポート」シリーズの第8回。ピュアグロース株式会社 ヘルスケア事業本部が、都道府県ごとの整骨院市場を人口構造・競合密度・エリア特性・勝ちパターンの4軸で徹底分析します。経営判断・出店戦略・差別化設計の実務に直接使えるデータをまとめました。
愛知県の競合密度は約31院/10万人。神奈川(31院)と並んで全国最低水準だ。施術所数2,351院に対して人口は約754万人——数字だけ見れば「参入しやすい市場」に見える。
ところが現実は違う。
愛知県、特に名古屋市では「コスパを徹底的に重視する消費文化」が根強い。「高くて良いもの」より「安くて良いもの」を選ぶ傾向が全国的に見ても際立っており、整骨院の高単価自費化に対して一定の抵抗感がある。
さらに「トヨタ城下町」という産業特性が、愛知の整骨院需要を独特の形にしている。製造業従事者が突出して多く(全国最多水準)、BtoB産業保健の最大市場でもある。
「競合が少ないから簡単」ではなく、「競合が少ないのに自費化が難しい理由がある」——この市場の本質を理解した院だけが、愛知で持続的に成長できる。
指標 | 数値 | 備考
総人口 | 約754万人 | 全国4位
高齢者人口(65歳以上) | 約196万人 | 高齢化率26.0%
生産年齢人口(15〜64歳) | 約487万人 | 構成比64.6%
年少人口(0〜14歳) | 約71万人 | 構成比9.4%
愛知県の高齢化率26.0%は全国平均(28.6%)を大きく下回る。製造業・自動車産業が牽引する経済が「働き盛りの世代を引きつける構造」を維持しており、生産年齢人口比率64.6%は全国でもトップ水準だ。
これは整骨院経営にとって「現役世代需要が突出して厚い」という意味だ。高齢者比率が低い分、「現役世代×製造業需要」を主戦場にした院の設計が愛知では特に重要になる。
主要都市別人口:
市 | 人口 | 特性
名古屋市 | 約233万人 | 中部最大都市・商業・IT・大学
豊田市 | 約42万人 | トヨタ本社・製造業の聖地
岡崎市 | 約38万人 | 製造業・家康の故郷
豊橋市 | 約37万人 | 農業・製造業・東三河中核
一宮市 | 約38万人 | 繊維業・ベッドタウン
春日井市 | 約31万人 | 名古屋北部ベッドタウン
安城市 | 約19万人 | デンソー・農業王国
刈谷市 | 約15万人 | 自動車部品・JTEKT・豊田合成
愛知の現役世代需要は日本でも特異な構造を持つ。製造業に特化した需要が極めて厚く、他県では少ない「工場労働者の職業病需要」が主力になる。
①自動車・製造業従事者(豊田・刈谷・安城・岡崎)
愛知県の製造業就業者数は全国最多(約75万人超)。トヨタ・デンソー・アイシン・ジェイテクト・豊田合成——自動車産業のサプライチェーンが集積するこのエリアの工場労働者は、全国最大規模の整骨院需要を生んでいる。
溶接・プレス・組み立てライン作業に従事する30〜50代男性の腰痛・肩こり・手首疾患は「職業病」として慢性化しており、継続受診率が高い。
②名古屋市のビジネスパーソン・IT層
名古屋駅周辺(ナゴヤ駅前・栄・伏見)はオフィス街として発展している。デスクワーカーの肩こり・腰痛需要は厚いが、「名古屋のコスパ文化」により自費化の設計には工夫が必要だ。
③農業従事者(知多半島・渥美半島・田原市)
愛知県は農業産出額も全国上位。知多・渥美・西三河の農業エリアには農業従事者の腰痛・膝痛需要が存在する。競合密度が低く、農業特化院のポジションが取りやすいエリアだ。
④スポーツ人口(名古屋・東海・岡崎)
名古屋グランパス(Jリーグ)・中日ドラゴンズ(プロ野球)のファン文化が厚く、アマチュアスポーツ人口も多い。名古屋ウィメンズマラソン・名古屋マラソン(参加者合計4〜5万人規模)はランニング人口の裾野の広さを示している。
指標 | 数値
施術所数(R4確定値) | 2,351院
推計年間市場規模 | 約2,821〜3,385億円
754万人の人口に対して施術所2,351院という数字は、供給が相対的に少ない状態を示している。需要は確実に存在するが、それが整骨院に向かうかどうかは「訴求の仕方」にかかっている。
📌 第1章の急所
愛知は高齢化率26%と全国最低水準。生産年齢人口64.6%という「現役世代が主役の市場」。製造業従事者75万人超という全国最大規模のBtoB需要を持ちながら、コスパ文化が自費化の壁になる——この矛盾を解くことが愛知攻略の核心だ。
指標 | 愛知県 | 全国平均
施術所数(R4確定値) | 2,351院 | —
競合密度 | 約31.2院/10万人 | 約40院/10万人
人口 | 約754万人(全国4位) | —
競合密度31.2院/10万人は神奈川(31院)と並んで全国最低水準だ。全国平均(40院)に対して約22%低い。
なぜ愛知の競合密度が低いのか。主な要因として「トヨタ・製造業に象徴される『身体を使う仕事をしている人ほど病院には行かない』文化」と「整体・整骨院より接骨院・医療機関を選ぶ傾向」が挙げられる。整骨院より「整形外科クリニック」「接骨院」への受診選好が高い側面もある。
エリア | 推計競合密度 | 特性
名古屋市中心部(中区・東区) | 50〜65院/10万人 | 商業・オフィス激戦
名古屋市住宅地(千種区・名東区) | 35〜50院/10万人 | 高所得ファミリー
豊田市 | 25〜35院/10万人 | 製造業集積・中程度競合
岡崎市 | 25〜35院/10万人 | 製造業×住宅
一宮市・春日井市 | 25〜35院/10万人 | ベッドタウン
豊橋市・豊川市 | 20〜30院/10万人 | 農業×製造業・低競合
知多半島 | 15〜25院/10万人 | 農業・低競合
渥美半島(田原市) | 10〜20院/10万人 | 農業・最低競合
名古屋市中心部は60院超と都市部の競合は高いが、豊橋以東・知多半島・渥美半島は全国最低水準の低競合地帯だ。
愛知の整骨院経営者からよく聞く悩みに「競合は少ないはずなのに患者が集まらない」というものがある。
原因は3つある。
①コスパ文化による自費化の壁
名古屋・愛知の消費者は「整骨院は保険で安く診てもらうもの」という認識が強固だ。自費施術の提案に対して「なんで高いの?」という反応が他県より多い傾向がある。これは消費意識の問題ではなく「価値が見えていないこと」が原因だ——価値の説明が不十分な院が、コスパ文化のせいにしているケースが多い。
②製造業の「痛みを我慢する文化」
工場労働者は「痛い→病院に行く」よりも「痛い→我慢して働く」文化が根強い。「整骨院に通う」という習慣がそもそも定着していない層が多く、「患者が自発的に来る」のを待っているだけでは集客が難しい。BtoB的なアプローチで「企業から院に送り込む」動線を作ることが必要になる。
③「なんでも対応」型院の乱立
競合密度が低いため「特化しなくても患者が来る」と思いがちだが、実際は「何でもやります型」は選ばれにくい。「愛知で何でも対応院」は埋没し、「この症状はここ」という専門性を持つ院に患者が集まる。
📌 第2章の急所
競合密度31院という数字は「参入しやすい」ではなく「自費化の工夫と積極的なBtoB集客が必要」を意味する。競合が少ないのに苦しい院は「待ちの経営」をしている。愛知では「攻め」の集客設計が不可欠だ。
名古屋駅・中村区・中区(ビジネス×交通集積型)
名古屋駅は東海道新幹線の主要停車駅であり、東京・大阪の中間点として多くのビジネスマンが行き交う。駅周辺の大型再開発(JPタワー名古屋・名古屋ミッドランドスクエア等)により、オフィスワーカーが集積している。
ランチタイムと退勤後の施術需要は高く、「名古屋駅から徒歩5分以内・夜21時まで対応」という立地条件が集客を左右する。
栄・錦・伏見(エンタメ×飲食業従事者)
栄周辺は名古屋最大の繁華街。飲食業・サービス業従事者が多く、立ち仕事の慢性疲労需要がある。競合密度は高いが、「飲食業従事者向け深夜帯施術」など細分化した訴求で差別化できる。
千種区・名東区・天白区(高所得住宅エリア)
名古屋東部の高所得住宅地帯。覚王山・本山・星ヶ丘周辺は健康意識の高いファミリー・共働き夫婦が多い。産後骨盤矯正・子どものスポーツ障害・スポーツコンディショニングへの需要が厚く、自費化がしやすいエリアだ。
名古屋の「コスパ文化」の中でも、このエリアは所得水準が高く「良いものには払う」消費許容度が比較的高い。
「トヨタ城下町」の整骨院需要
豊田市はトヨタ自動車本社・主要工場が立地する「自動車産業の聖地」。刈谷市はJTEKT・豊田合成・アイシン等の部品メーカーが集積し、安城市はデンソー・農業(安城農林高校で知られる農業教育の街)と製造業が共存する。
この地域の製造業従事者は数十万人規模で、腰痛・肩こり・手首疾患の職業病需要は日本で最も濃い地帯だ。
BtoBが最も機能するエリア
豊田・刈谷・安城では「工場への法人営業」が最も現実的な集客手段だ。企業の産業医・安全衛生担当との連携を構築し、「従業員向け施術プログラム」を提案することで、月30〜100名規模の安定集客が実現できる。
トヨタ本体への提案は難易度が高いが、系列の中小サプライヤー(従業員30〜200名規模)への提案は現実的だ。この規模の企業は産業医を社内に持たないケースが多く、外部の整骨院との連携に前向きなことが多い。
岡崎市は徳川家康の故郷として知られ、岡崎城・桜の名所として観光客も多い。デンソー・アイシン・矢崎総業などの工場があり、製造業と観光が共存する。
豊川市は豊川稲荷への参拝客(年間500万人超)があり、観光×製造業の需要が混在する。競合密度は低く、製造業BtoB×観光特需の組み合わせが狙える。
戦略的急所——製造業×農業の低競合地帯
豊橋市(人口約37万人)を中心とした東三河エリアは、自動車部品製造業と温室農業(バラ・電照菊)が共存する独特のエリアだ。競合密度は20〜30院/10万人と低く、「地域で知られた院」になりやすい。
渥美半島(田原市)は日本最大の農業規模を誇り、製造業(三菱自動車工業・田原工場)も立地する。競合密度10〜20院/10万人という「全国でも有数の低競合エリア」だ。
半田市・常滑市・知多市・東海市が連なる知多半島。中部国際空港(セントレア)が立地し、航空関連産業・製造業が集積する。
東海市には大手鉄鋼メーカー(日本製鉄東海工場)があり、製造業従事者の腰痛需要が厚い。競合密度は15〜25院/10万人と低く、工場BtoBアプローチが有効だ。
📌 第3章の急所
愛知の最重要エリアは「豊田・刈谷(BtoB製造業)」と「名古屋千種・名東区(高所得自費化)」と「豊橋・渥美(低競合×農業×製造業)」の3つ。名古屋中心部の激戦を避けて豊田・豊橋エリアに出店するのは、愛知の「賢い戦い方」の一つだ。
指標 | 数値
高齢者人口 | 約196万人
高齢化率 | 約26.0%(全国平均より大幅に低い)
前期高齢者(65〜74歳) | 約97万人
後期高齢者(75歳以上) | 約99万人
高齢化率26.0%は全国下位水準。絶対数は196万人と大きいが、現役世代比率が高い愛知では「高齢者依存型の経営は利益率が低い」ということを覚悟する必要がある。
愛知の高齢者の多くは「製造業で身体を使ってきた世代」だ。工場勤務を経てきた60〜75歳は、慢性腰痛・変形性膝関節症・肩峰下インピンジメントといった職業病が進行している。
この層は「整骨院で治してもらう」というより「整骨院で身体の管理をしてもらう」感覚で通う。月2〜4回の定期通院が続きやすく、院の安定基盤として機能する。
愛知の高齢者に自費施術を提案する際の最大の壁は「保険で診てもらえばいいじゃないか」という考え方だ。これを正面突破しようとしても難しい。
現実的なアプローチ:
最初の3か月は保険施術で信頼関係を作る
3か月後に「今やっている保険の施術でカバーできていない部分がある」と事実ベースで話す
「月1回だけ試してみましょう」と少額・低頻度で始める
効果が出たら「続けませんか」と患者から言ってくれるまで待つ
愛知の患者は「押し付け感」を嫌う。「勧めてくる先生」より「相談に乗ってくれる先生」のイメージで自費を提案することが、愛知流の自費化だ。
📌 第4章の急所
愛知の高齢者は「製造業で身体を使ってきた世代」。慢性疼痛の管理ニーズは強い。自費化には「押し付けず・効果で納得させる」愛知流のアプローチが必要。3か月かけて信頼を積み上げ、患者から「続けたい」と言わせることを目標にする。
愛知の生産年齢人口約487万人——これは全国最大の現役世代需要市場の一つだ。
愛知の製造業就業者は約75万人超(全国最多)。特に豊田・刈谷・安城・東海の工場地帯では、30〜55歳の男性製造業従事者が腰痛・肩こり・手首疾患を抱えて働き続けている。
なぜ製造業従事者は整骨院に来にくいか
工場の文化として「痛みを我慢する」ことが「プロフェッショナリズム」と見なされる雰囲気がある。「休む=迷惑をかける」という感覚があり、定期的な整骨院通院を「贅沢」と捉える人も少なくない。
だからこそ「企業から送り込む仕組み」が必要だ。産業医・安全衛生担当者との連携、工場での腰痛予防セミナー、企業福利厚生への組み込み——製造業従事者を「個人として集客する」のではなく「組織ごとアプローチする」発想が愛知では不可欠だ。
名古屋市内の大企業(トヨタ本社・中部電力・三菱UFJ銀行名古屋支店等)やIT企業のビジネスパーソン。デスクワーク由来の疼痛需要は厚いが、「コスパ文化」の壁がある。
名古屋ビジネスパーソンへの自費化戦略
名古屋の消費者は「まず体験してから判断する」プロセスを踏む傾向がある。「無料体験セッション」「初回半額」などのハードルを下げた入口設計が、他県より重要になる。
体験で「これは確かに違う」と感じてもらえれば、その後の継続率は高い。最初の一歩を踏み出すハードルを下げることが愛知の自費化の鍵だ。
愛知県は農業産出額全国上位(花卉・温室野菜・畜産)。知多半島・渥美半島・西三河の農業従事者は腰痛・膝痛の慢性化が進んでいる。
「農業腰痛専門院」というポジションは、愛知でも競合がほぼ存在しない差別化だ。農業従事者は一度信頼関係を築くと長期通院してくれる傾向が強く、安定した経営基盤になりやすい。
層 | 愛知での役割
高齢者(製造業OB・農業OB) | 安定基盤。保険+小額自費。長期継続。
製造業現役世代 | BtoB法人経由で安定集客。単価は中程度。
IT・ビジネス専門職 | 高単価自費化の成長エンジン。口コミ起点。
スポーツ人口 | 高単価。名古屋マラソン等の競技人口を狙う。
愛知では「製造業BtoBを安定基盤とし、高単価自費層で単価を上げる」二層設計が最も堅牢だ。
📌 第5章の急所
愛知の現役世代需要の核は製造業従事者75万人。ただし個人集客より「企業ごと来てもらう」BtoBアプローチが愛知では圧倒的に効率が高い。製造業BtoBを安定基盤にし、名古屋市内の高単価層で成長を乗せる設計が愛知の正攻法だ。
タイプ | 比率(体感) | 特徴
①保険中心・地域固定 | 約45% | 競合密度が低く「待ちの経営」が続いてきた院
②製造業特化型 | 約20% | 豊田・刈谷周辺に多い工場系院
③名古屋市内 広告型 | 約20% | Googleマップ・ホームページ集客
④自費転換済み | 約10% | 名古屋東部・高所得エリアで成功
⑤スポーツ特化型 | 約5% | 名古屋市内の一部
愛知の競合院の45%が「待ちの経営」院だ。これは裏を返せば、「攻めの経営」をするだけで上位30%に入れる可能性があることを意味する。
軸①:製造業BtoB(豊田・刈谷・安城・東海)
「トヨタ系サプライヤーの従業員に選ばれる整骨院」というポジションは、愛知で最も再現性が高い差別化だ。工場の安全衛生部門との連携という「攻め」のアプローチが機能する。
軸②:農業特化(知多・渥美・西三河)
「渥美半島の農業従事者専門院」は競合がほぼゼロのポジション。農業地帯での口コミは速く広がる。
軸③:名古屋東部 高単価完全自費(千種・名東・天白)
名古屋のコスパ文化の中で「例外的に高単価が機能するエリア」がある。千種・名東・天白は所得水準が高く、「良いものには払う」消費傾向がある。完全自費・高品質院がポジションを取れる。
📌 第6章の急所
愛知の差別化は「製造業BtoB(豊田・刈谷)」「農業特化(渥美・知多)」「名古屋東部高単価自費」の3軸が現実的。競合密度が低い分、差別化しなくても患者が来ると油断している院が多い。今が差別化を固める絶好のタイミングだ。
愛知の集客で最も大切なことを一言で言う。
「待つな。攻めろ。」
競合密度31院という数字に油断して「競合が少ないから患者は来るはず」という受け身の姿勢が、愛知の院が苦しくなる最大の原因だ。
製造業従事者は自発的に整骨院に来ない。だから企業に行く。農業従事者は「先生に診てもらおう」と気づくまでに何年もかかる。だからJAに行く。名古屋の消費者は体験なしに高単価を払わない。だから体験機会を作る。
全て「院を待ちの場にしない」アプローチだ。
愛知で最も投資対効果が高い集客チャネルは「法人BtoB営業」だ。具体的な手順を示す。
ステップ1:ターゲット企業のリストアップ(1週間)
院から半径5km以内の製造業企業(従業員30〜300名規模)をリストアップ。Google Mapsで「工場」「製造」で検索し、20〜30社を特定する。
ステップ2:アプローチレターの作成(3日)
総務部門・安全衛生担当宛の「腰痛予防セミナーの無料実施提案」レターを作成。A4一枚で「院の紹介・セミナーの内容・費用無料の明記」を盛り込む。
ステップ3:郵送+フォローアップ(継続)
レターを郵送し、1週間後に電話フォローアップ。「ご担当者様におつなぎいただけますか」と話す。アポイントが取れたら訪問し、セミナー実施の日程調整を行う。
ステップ4:セミナー実施→体験券配布
セミナーは30〜60分。「腰痛の仕組み・予防ストレッチ・施術で改善できること」を分かりやすく話す。参加者全員に「初回施術体験無料券」を配布。
ステップ5:体験→継続へ
体験来院者に施術後「いかがでしたか?今後の継続ケアについてご説明しますね」と自然に継続プランを提案する。
このプロセスで1社から月5〜15名の来院が継続するケースが実際にある。3社契約できれば月15〜45名の安定集客基盤だ。
名古屋市内ではGoogleマップ(MEO)とInstagramが主力チャネルだ。
名古屋のGoogleマップ特有の注意点
名古屋の消費者は口コミを「丁寧に読む」傾向がある。「良さそう」という感覚でなく「実際に良かった事例がある」という証拠を口コミに求める。口コミの「内容の質(具体的な症状改善事例が書かれているか)」が重要で、数だけでなく「読まれる口コミ」を獲得する施策が必要だ。
口コミ依頼をする際に「施術でどう変わったか、具体的に書いていただけると嬉しいです」と一言添えるだけで、口コミの内容が具体的になる。
農業従事者への最速アプローチは「JA・農協のチャンネルを使う」ことだ。
① 管轄のJA(JA愛知東・JA西三河・JA知多等)の事業部に「農業従事者向け腰痛予防セミナーの無料実施提案」を持ち込む
② 農業イベント・農機具展示会に整骨院ブースを出展する
③ 農業系SNS(農家向けInstagram・Facebook農業グループ)でコンテンツを発信する
農業従事者の口コミは「集落単位」で広がりやすい。一人が通い始めると同じ集落の数家族が来院するパターンがある。
📌 第7章の急所
愛知の集客は「待ちの経営」から「攻めの経営」への転換が全ての起点。法人BtoB(製造業)、農協アプローチ(農業従事者)、体験重視のデジタル集客(名古屋市内)——それぞれのエリアに合った「攻め」の手を選ぶ。
対象エリア:豊田市・刈谷市・安城市・碧南市
主要ターゲット:30〜55歳の自動車産業従事者
コンセプト
「トヨタのまちで、職人の身体を守る整骨院」。
集客設計
① 院から半径5km内の中小製造業サプライヤーに「腰痛予防セミナー提案レター」を月3〜5社送る
② 刈谷市・安城市の商工会に加入し、製造業経営者のネットワークに入る
③ セミナー→体験→継続プランの流れを標準化し、月5社ペースでアプローチを継続する
目標数値(12か月後)
法人契約:5〜8社
月間来院:100〜150名
月間売上:80〜120万円
対象エリア:名古屋市千種区・名東区・天白区
主要ターゲット:35〜55歳の高所得ファミリー・共働き専門職
コンセプト
「名古屋で一番丁寧な説明をする、結果にこだわる整骨院」。完全自費・7,000〜12,000円。
集客設計
① 名古屋の「コスパ文化」を踏まえ、初回体験1,000〜2,000円という低リスク入口を設定
② 施術前後のビフォーアフター写真・可動域数値を必ず提示し「変化の見える化」を徹底する
③ Googleマップ口コミに「具体的な症状改善事例」が書かれるよう施術後に丁寧に依頼する
④ 地域の幼稚園・スポーツ少年団との連携で産後・スポーツ障害需要を取り込む
対象エリア:田原市・渥美半島・知多半島
主要ターゲット:40〜65歳の温室農業・花卉農業従事者
コンセプト
「渥美・知多の農家さんの腰と膝を守る。農業腰痛専門院」。
集客設計
① JA愛知東・JA渥美への「農業腰痛予防セミナー無料実施」提案
② 田原農業まつり・農機具展示会への出展(年1〜2回)
③ 「農業のための身体ケア」Instagramアカウントを立ち上げ、農業×身体ケア情報を発信
④ 地元農業高校・農業大学への「農業従事者の腰痛予防講座」提案
このパターンは愛知県内でほぼ競合が存在しない。一度「農業腰痛の専門院」として認知されれば、農村の口コミで数年間の安定集客が実現する。
対象エリア:名古屋市内・近郊
主要ターゲット:25〜50歳のアマチュアランナー・スポーツ愛好家
コンセプト
「名古屋ウィメンズマラソン・名古屋マラソンの参加者を支える、ランナー専門整骨院」。
名古屋は年間参加者合計4〜5万人規模のマラソン大会を抱え、ランニング人口の裾野が広い。名古屋グランパスのサポーター・地域サッカーコミュニティも大きい。
集客設計
① 名古屋のランニングクラブ(30〜50クラブ存在)に「スポーツ障害予防セミナー無料実施」を提案
② Instagram・YouTubeで「マラソン膝・ランニング障害ケア」コンテンツを発信
③ 名古屋ウィメンズマラソン・名古屋マラソンの大会前後の「ランナーケアキャンペーン」を展開
対象エリア:豊橋市・豊川市・蒲郡市
主要ターゲット:30〜60歳の製造業従事者・農業従事者
コンセプト
「東三河の働く人の身体を支える。製造業も農業も診られる整骨院」。
豊橋・豊川エリアは製造業(三菱自動車工業田原工場・豊川市の工場群)と農業(温室農業・畜産)が共存する独特の市場。競合密度20〜30院/10万人と低く、「地域に欠かせない院」のポジションが取りやすい。
集客設計
① 工場BtoBアプローチ(月3〜5社への提案)と農協アプローチ(JA豊橋)を並行して実施
② 地元商工会・農業団体の会合に定期参加して地域コミュニティに溶け込む
③ 「製造業の腰痛」と「農業の腰痛」両方に対応できる専門性を持ち、地域の「何でも診られる先生」ポジションを獲得する
📌 第8章の急所
愛知の勝ちパターンに共通するのは「攻め」の姿勢。BtoB営業・農協アプローチ・スポーツコミュニティ連携——いずれも「院にいて待つ」ではなく「地域に出て関係を作る」動きだ。競合密度31院という低競合環境を活かし、今のうちに地域での専門ポジションを確立することが愛知攻略の核心だ。
愛知は「競合密度が低い・製造業需要が全国最大・コスパ文化という壁がある」という独特の市場だ。競合が少ないのに苦しい院は「待ちの経営」をしている。攻めのBtoB集客と、名古屋流の「体験から始まる自費化」の組み合わせが愛知攻略の王道だ。
今週(費用0円)
院から半径5km以内の製造業企業を10社リストアップする
自院のGoogleマップに「何の専門院か・どんな人に来てほしいか」を明記する
月間患者を「製造業・農業・一般会社員・スポーツ・高齢者」で分類する
今月(費用5,000〜15,000円)
「腰痛予防セミナー提案レター」を作成し、製造業企業3社に郵送する
Googleマップ口コミを月3件ペースで増やす施策を開始する
初回体験の「入口価格」を設定し、ホームページ・マップに明記する
3か月(月5〜10万円以内)
法人アプローチを継続し、初のセミナー実施を実現する
月次の保険・自費比率を記録し始める
農業エリアなら近隣のJAへの連絡を1件入れる
愛知の多くの院が今すぐ変えるべきことは「『患者が来るのを待つ』姿勢をやめること」だ。
競合が少ないことは「頑張らなくていい理由」ではなく「今行動すれば地域ポジションを独占できる時間的猶予がある」ということだ。
豊田・刈谷で製造業BtoBに取り組んでいる院はまだ少ない。渥美半島で農業腰痛専門院をうたっている院は存在しない。名古屋東部で「名古屋でいちばん丁寧な説明をする院」になれる余地がある。
この「空白」は、今動いた院にだけ開かれているドアだ。
愛知県の整骨院市場を整理する。
市場の基本スペック
施術所数:2,351院(R4確定値)
競合密度:約31.2院/10万人(全国最低水準)
高齢化率:約26.0%(全国最低水準・現役世代が主役)
総人口:約754万人(全国4位)
愛知市場の攻略3原則
「待ちの経営」を今日やめる:競合密度31院という低競合は「攻める余地がある」サイン
製造業BtoBを主戦略に据える:75万人の製造業従事者に個人集客するより企業ごと来てもらう方が圧倒的に効率が高い
コスパ文化を「体験で突破する」:名古屋の「高くて良いもの」への抵抗は「体験してもらえれば消える壁」
次回は第9回・埼玉県の整骨院マーケット分析をお届けします。
著者プロフィール:宮澤 駿
株式会社ピュアグロース ヘルスケア事業本部 本部長
大学卒業後、株式会社船井総合研究所に入社。入社後は12年間、整骨院を中心に治療院業界のコンサルティングに特化し、成功事例企業を多数輩出。業界のM&Aにも携わりながら、部長として社内マネジメントも経験。「お客様の純粋な成長」を実現掲げるピュアグロースの理念に共感しヘルスケア事業本部を2026年4月に立ち上げ。パーソナルパーパスは「業界・企業・人の可能性を信じ、伴走し、未来を共に創る」。
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本レポートはR4衛生行政報告例(厚生労働省)確定データ・各種公開統計および業界調査をもとに執筆しています。