COLUMN
2026.05.28|整骨院マーケットレポート
シリーズについて
このレポートは「47都道府県 整骨院マーケットレポート」シリーズの第5回。ピュアグロース株式会社 ヘルスケア事業本部が、都道府県ごとの整骨院市場を人口構造・競合密度・エリア特性・勝ちパターンの4軸で徹底分析します。経営判断・出店戦略・差別化設計の実務に直接使えるデータをまとめました。
兵庫県の整骨院市場には、あまり知られていない「不都合な事実」がある。
令和2年(2020年)から令和4年(2022年)の2年間で、兵庫県の柔道整復施術所は103件増加した。これは全国47都道府県中、ダントツの1位だ。
東京でも大阪でもなく、兵庫県が最も整骨院が増えている。
なぜか。隣の大阪が「競合密度69院/10万人」という飽和状態になり、出店を検討していた院が「少しだけ競合の薄い兵庫へ」とシフトしてきている面がある。加えて、神戸・阪神間の人口流入エリアは新規開院に魅力的な商圏として映りやすい。
この現実を踏まえずに「兵庫で開院・経営改善しよう」と動くと、気づいたら競合が急増していた——という状況になりかねない。
このレポートでは、「理想論」ではなく「今すぐ動ける現実的な戦略」にフォーカスして兵庫の市場を解剖する。正直に言う。チラシを配れば患者が来るほど今は甘くないし、「とにかく新規を増やせ」というアドバイスだけでは現実は変わらない。院が持続するための、本当の話をしていく。
指標 | 数値 | 備考
総人口 | 約543万人 | 全国7位
高齢者人口(65歳以上) | 約160万人 | 高齢化率29.5%
生産年齢人口(15〜64歳) | 約325万人 | 構成比59.9%
年少人口(0〜14歳) | 約58万人 | 構成比10.6%
兵庫県は全国7位の人口規模を持ちながら、その地理的特性が独特だ。南北に細長い県土(南北約150km)に、「大都市」「ベッドタウン」「工業都市」「農村」「離島」が混在する。同じ「兵庫県の整骨院」でも、神戸と豊岡では全く異なる市場で戦っていると理解することが出発点になる。
主要都市別人口:
市 | 人口 | 特性
神戸市 | 約149万人 | 大都市・港町・ファッション・観光
西宮市 | 約49万人 | 高所得・阪神間・大阪通勤者
尼崎市 | 約45万人 | 工業・若い世代・大阪隣接
姫路市 | 約52万人 | 播磨中核・製造業・城下町
明石市 | 約31万人 | 大阪・神戸通勤ベッドタウン
芦屋市 | 約9万人 | 超高所得・ブランド消費文化
宝塚市 | 約22万人 | 文化都市・高所得ファミリー
豊岡市 | 約7.3万人 | 但馬エリア中核・農業・観光
兵庫県の生産年齢人口約325万人は、職種や産業によって明確にセグメントが分けられる。
①製造業従事者(播磨・尼崎)
姫路・加古川には川崎重工業・三菱重工業・パナソニックなどの工場が集積する。板金・溶接・プレス・重量物作業に従事する30〜50代男性の慢性的な腰痛・肩こりは、整骨院の最も安定した需要源だ。
②神戸・阪神間のビジネスパーソン
梅田や三宮にオフィスが集中し、JR・阪急・阪神でアクセスする通勤者が多い。デスクワーク由来の頸肩腕症候群・腰痛が主需要。三宮周辺は飲食業従事者も多く、立ち仕事疲労の需要もある。
③スポーツ人口(北摂〜阪神間)
サッカー・野球・ランニング・自転車(六甲山系)の競技人口が多い。特に宝塚・三田・西宮には高所得のスポーツファミリーが多く、スポーツコンディショニングへの支出意欲が高い。
④農業・林業従事者(但馬・丹波)
農業・林業に従事する高齢〜中年世代の身体的負荷は高い。都市部に比べ整骨院の絶対数が少ないため、少ない競合で安定した地域密着経営が成立しやすい。
指標 | 数値
施術所数 | 2,459院(R4確定値)
推計年間市場規模 | 約2,950億〜3,540億円
📌 第1章の急所
兵庫県は「神戸市圏(約200万人)」「阪神間(約100万人)」「播磨(約130万人)」「但馬・丹波(約25万人)」の4つの全く異なる市場が同居する。「兵庫県対策」は存在しない。「どのエリアの誰に向けて何をするか」から設計する。
指標 | 兵庫県 | 全国平均
施術所数(R4確定値) | 2,459院 | —
総人口 | 約543万人 | —
競合密度 | 約45院/10万人 | 約40院/10万人
R2→R4施術所増加数 | +103院(全国1位) | —
全国平均(約40院/10万人)より高いが、大阪(69院)や東京(50院)より低い——それが兵庫県の現状だ。「まだマシ」に見えるが、増加ペースが全国1位という事実を直視しなければならない。
2年で103院増加ということは、月平均4〜5院が新たに開院している計算だ。このペースが続けば、2〜3年後には競合密度50院超も視野に入る。
エリア | 推計競合密度 | 大阪の影響
神戸市内 | 約55〜65院/10万人 | 中
阪神間(西宮・尼崎) | 約50〜60院/10万人 | 大
芦屋 | 約40〜50院/10万人 | 中
播磨(姫路・加古川) | 約35〜45院/10万人 | 小
但馬(豊岡) | 約15〜25院/10万人 | 極小
淡路島 | 約20〜30院/10万人 | 小
大阪に隣接する阪神間は「大阪から越境してきた院」が集積しており、競合環境は実態として大阪に近い。一方、但馬・淡路島は依然として競合密度が低い。
2年で全国1位の増加数(103院)を素直に読めば「今が出店のラストチャンスかもしれない」という解釈と「この増加ペースが続くなら今から準備を急ぐべき」という解釈の両方が成り立つ。
重要なのは「増えているから有望」ではなく「増えているからこそ差別化設計が必要」という視点だ。競合が増えてから差別化を考えるのでは遅い。今のうちに「選ばれる理由」を作り込む必要がある。
📌 第2章の急所
兵庫県の競合密度は全国平均をやや上回る45院/10万人。しかし増加ペースは全国1位(2年で103院増)。「今はまだ競合が少ない」という感覚は危険信号だ。増える前に差別化を固める。
神戸市は人口約149万人を抱える近畿圏第2の都市。三宮・元町・北野・灘・東灘といったエリアごとに客層が全く異なる。
三宮・元町(ビジネス×観光複合型)
三宮は兵庫県最大のターミナル。JR・阪急・阪神・地下鉄が集まり、オフィスワーカーと観光客が混在する。ランチタイムと退勤後の施術需要が高く、インバウンド観光客(特に中華系・欧米系)のリラクゼーション・疼痛ケア需要も一定数ある。
競合密度は神戸市内で最も高いエリア(推計65院/10万人超)。「近いから」という理由だけでは患者に選ばれない。
東灘・灘エリア(高所得住宅地)
甲南・岡本・住吉・六甲道周辺は神戸随一の高所得住宅地帯。阪急沿線の高級住宅地を抱え、健康投資意識が高い30〜50代の専業主婦・共働きファミリーが多い。産後骨盤矯正・姿勢改善・スポーツコンディショニングへの消費意欲が高く、自費化に向いたエリアだ。
神戸市北区・西区(郊外ファミリー型)
神戸市の北部・西部は郊外住宅地。ニュータウン(西神)もあり、ファミリー層が多い。競合密度は市内中心部より低く、「地域かかりつけ院」を目指しやすいエリアだ。
「阪神間」と呼ばれるJR・阪急・阪神が並走するこのエリアは、大阪通勤者の「良質な住宅地」として根強い人気を誇る。
西宮市・芦屋市(高所得ブランドエリア)
関西屈指の高所得エリア。芦屋市の平均世帯年収は全国トップクラス。整骨院の自費メニュー・高単価サービスに対する消費許容度が高く、「値段が少し高くても、良いものを」という選択基準が働く。
完全自費移行・高単価施術の実験場として最も適したエリアの一つだ。
尼崎市(大阪隣接・実需型)
大阪市と実質的に一体化している尼崎は、競合密度が高く価格感度も高い。神戸よりも大阪(梅田から15分)に近く、「大阪の消費文化」を色濃く持つ。低価格競争にはまりやすい市場でもある。
宝塚市(文化×ファミリー型)
宝塚歌劇のホームタウン。文化的消費意識が高く、健康・美容への投資意欲が強い。宝塚受験生(音楽学校受験の女子)のケガ・姿勢矯正などのニッチ需要も存在する。
播磨は「工業都市×城下町×ベッドタウン」の複合エリア。
姫路市(製造業×観光)
川崎重工業・三菱重工業の主要拠点があり、製造業従事者が多い。世界遺産・姫路城目当ての観光客も年間300万人を超える。製造業BtoB需要と地域住民の日常的な受診需要が共存するバランス型市場だ。
競合密度は播磨エリアで35〜40院/10万人程度(推計)と全国平均と同水準。「まだ差別化の余地がある」市場だ。
加古川・明石(ベッドタウン安定型)
神戸・大阪への通勤者が多いベッドタウン。安定した住宅需要に支えられ、地域密着型の院が長期経営しやすいエリア。特に明石市は人口が微増しており、数少ない「成長している地域」の一つだ。
戦略的急所——全国最低水準に近い競合密度
但馬エリアの競合密度は推計15〜25院/10万人。これは全国的に見ても「競合が少ない」部類だ。
人口減少・高齢化率40%超のエリアも存在するが、「競合がいない地域で唯一院的ポジションを取れる」メリットは大きい。城崎温泉・出石・天空の城(竹田城)などの観光地は、インバウンドや国内旅行者向けの施術需要も生んでいる。
「激戦区で戦いたくない」「地域に根ざした院を作りたい」という方向性の院にとって、但馬は兵庫県の中で最も「穴場」のエリアだ。
人口約12万人・高齢化率約34%の淡路島は、近年「移住・リゾート地」として注目を集めている。
徳島・淡路自動車道の整備と、ハイエンドなホテル・グランピング施設の開業が続いており、島内経済は緩やかに活性化している。競合密度は低く(推計20〜30院/10万人)、観光客と島民の二重需要を狙えるポジションがある。
📌 第3章の急所
兵庫の5エリアはそれぞれ「別市場」。阪神間(大阪文化・高競合)、神戸(観光×高所得)、播磨(製造業×安定)、但馬(低競合×高齢化)、淡路(リゾート×低競合)——同一の戦略が通じるエリアはない。出店・戦略設計は「エリアの文法」を読むことから始まる。
指標 | 数値
高齢者人口 | 約160万人
高齢化率 | 約29.5%
前期高齢者(65〜74歳) | 約79万人
後期高齢者(75歳以上) | 約81万人
約160万人の高齢者は整骨院の安定的な需要基盤だ。但馬・丹波・淡路島では高齢化率が40%を超えるエリアもあり、高齢者需要が市場の主役となっている。
高齢者患者は「慣れた院に通い続ける」傾向が強い。裏を返せば、一度患者になってもらえれば長期間の継続が見込める。
ただし保険施術だけを頼りにした経営は、行政の保険適正化の波に常にさらされている。「保険で月8回・1回500円」モデルは経営的に薄く、持続性に欠ける。
高齢者患者への現実的な自費誘導の手順
① 「今日の施術で一番楽になった部位はどこですか?」と聞く
② その部位に関連する「継続的なケアプラン」を提示する
③ 月2,000〜3,000円の自費追加メニューを提案する(いきなり5,000円は高い)
④ 「試しに来月1回だけ」という低リスク体験から入る
高齢者に「いきなり高単価」は機能しない。小さな自費体験を積み上げて、「これなら払える・払いたい」という関係性を育てていく。
但馬・丹波エリアの整骨院経営者によく伝えることがある。「新規集客より先に、今いる患者の通院頻度を週1回から月1回でいいから増やすことに集中してほしい」ということだ。
人口が少ないエリアで新規患者を集め続けるのは構造的に限界がある。1人の患者が3回通うか、10回通うかで年間売上は3倍以上変わる。都市部の「新規集客ゲーム」よりも、地方の「継続率改善ゲーム」の方が実は経営に効く。
📌 第4章の急所
高齢者は安定基盤。ただし「保険で細く長く」では経営は改善しない。月2,000〜3,000円の小さな自費体験から始め、継続率と客単価を同時に高める設計が現実的だ。
姫路・加古川・高砂エリアには、川崎重工・三菱重工・パナソニックなどの主要工場が集積する。製造業従事者は約10万人規模(播磨広域)。
鉄鋼・造船・電機製造に従事する30〜50代男性は、腰痛・肩こり・手首疾患の慢性化が著しい。「仕事で痛めた」という明確な受診動機があり、一度信頼関係を築くと高い継続率を示す。
BtoB産業保健アプローチの実践
工場との法人契約は、播磨エリアで最も現実的な「安定集客」手段だ。具体的には:
工場の総務・安全衛生担当に連絡(電話か飛び込みで)
「従業員向け腰痛予防セミナーを無料で実施します」と提案
セミナーで参加者に体験施術のクーポンを配布
通院した従業員から口コミが広がる
これを「コンサルが言う法人営業」だと難しく考えると動けなくなる。実態は「近くの工場に挨拶に行って、健康セミナーをやらせてもらう」という単純な行動だ。
三宮・元町のオフィス街から徒歩圏内の院は、ランチタイム(12〜13時)と夕方(17〜19時)に集中した需要を取り込める。
デスクワーカーのニーズは「肩こり・頸部の痛みを早く取ってほしい」というシンプルなもの。長い説明より「今日どれくらい楽になったか」の体感が全てだ。
初回体験が良ければ「会社の同僚にも紹介する」という口コミが起きやすい層でもある。オフィス街の整骨院で最も強力な集客手段は「口コミ紹介」だ。
神戸には「ヴィッセル神戸」、播磨には社会人スポーツ・草野球・フットサルの盛んな文化がある。特に「六甲山トレイルラン」「神戸マラソン」(参加者約2万人)はランニング人口の集積を示している。
スポーツ人口の整骨院ニーズは「早期復帰」と「パフォーマンスアップ」。この層は自費施術の高単価に最も寛容で、「良い結果が出るなら払う」という消費行動をとる。
層 | 患者像 | 収益貢献
安定層(高齢者) | 週1〜2回・低〜中単価 | 毎月安定した売上基盤
成長層(現役世代) | 月2〜4回・中〜高単価 | 単価アップ・口コミ源
現役世代は口コミを起こしやすい。「先生に診てもらって、マラソンで自己ベストが出た」「腰の手術を回避できた」という体験は、SNS投稿や職場の口コミにつながりやすい。院の評判を作るのは現役世代患者だ。
📌 第5章の急所
兵庫の現役世代需要は「播磨の製造業(BtoB)」「三宮ビジネスパーソン(口コミ型)」「スポーツ人口(高単価自費)」の三角形で攻める。特に播磨の製造業BtoBは、東大阪ほど知名度がないため競合が少ない穴場だ。
兵庫県で実際に存在する競合タイプを正直に分類すると:
タイプ | 比率(体感) | 特徴
①保険依存・地域固定型 | 約50% | 昔からある院・広告なし・自費なし
②チラシ・ポスティング型 | 約20% | 新規集客はやっている・リピートが続かない
③デジタル集客先行型 | 約15% | MEO・ホームページ注力・内容は平均的
④特化専門型 | 約10% | スポーツ・産後・交通事故などに特化
⑤複合型(自費転換済) | 約5% | 保険+自費設計が機能している繁盛院
兵庫県のほとんどの院は①〜②に属している。つまり、③〜⑤を目指すだけで「上位20%」に入れる可能性がある。
「差別化しましょう」という言葉は聞き飽きているかもしれない。問題は「どうやって」だ。
差別化の本質は「誰かの頭の中で一番になること」
「整骨院の差別化」を難しく考えすぎている院が多い。難しいことをしなくていい。
たとえば豊岡の整骨院なら「城崎温泉観光客の肩こり・腰痛に対応」というだけで、周囲に同じことをしている院がなければ差別化だ。加古川の院なら「川崎重工の社員が通う腰痛専門院」というポジションを地域で作れれば、それが差別化だ。
「他の院と何が違うか」ではなく「この地域で自院が一番になれる切り口は何か」を考えることが差別化の出発点だ。
📌 第6章の急所
兵庫の競合院の約70%は保険依存型かチラシ頼み。デジタル集客と自費設計を組み合わせるだけで、競合の上位に入れる。「難しい差別化」より「地域でポジションを一つ取ること」の方が現実的かつ効果が出やすい。
この章が本レポートの核心だ。整骨院経営者が「集客に困っている」と言う時、多くの場合は「何をやっても効果が出ない」ではなく「間違った順番でやっている」ことが原因だ。
「新規患者が少ない」と感じている院主に最初に聞くことがある。「今の患者の月平均通院回数はいくつですか?」
ほとんどの院は答えられない。把握していない。
新規集客に手を付ける前に、まず「既存患者がなぜ来なくなっているか」を把握する必要がある。新規を100人獲得しても、80人がすぐ辞めていたら永遠にザルに水を注ぎ続けることになる。
最初にやるべき数値把握(1週間あれば出せる)
月間新患数
患者の平均通院回数(月間)
3か月後の継続率(3か月前に初診した患者のうち今も通院中の割合)
月間売上の保険・自費比率
これが分からない状態で「どの集客手法を使えばいいですか?」と聞いても、的外れなアドバイスしかできない。
チャネル | 費用 | 効果の出やすさ | 適合エリア
Googleマップ(MEO)最適化 | ほぼ0円〜 | ★★★★★ | 全エリア
SNS(Instagram/TikTok) | 時間のみ | ★★★★☆ | 三宮・阪神間・神戸
ホームページSEO | 月3〜10万円 | ★★★☆☆ | 都市部
ポスティング(チラシ) | 月3〜8万円 | ★★☆☆☆ | 郊外・地方
ホットペッパー等 | 月3〜15万円 | ★★☆☆☆ | 三宮・梅田近郊
法人営業(BtoB) | 交通費・時間 | ★★★★☆ | 播磨・尼崎
口コミ紹介設計 | ほぼ0円 | ★★★★☆ | 全エリア
最も重要な事実:Googleマップの口コミ数と平均評価は、集客の現状を最も正確に反映している指標だ。
Googleマップの評価が3.8以下・口コミ数が20件以下の院は、新規患者がスマホで検索した時に選択肢から外れている。これが「新規が来ない」の最大原因になっているケースが多い。
ポスティングの効果が出るための条件は3つある。
①エリアに競合院がほとんどない(競合密度30院/10万人以下)
②デザインと訴求メッセージが明確
③半径1km以内・月2〜3万枚以上の継続配布
兵庫県の都市部(神戸市内・西宮・尼崎)では①を満たすことが困難だ。月5万円かけて1000枚刷って500枚配って2人来院——こういう事例が珍しくない。
一方、但馬・丹波・淡路島の農村エリアでは「新しい整骨院が開院した」という情報自体に価値があり、チラシが機能しやすい。
ポスティングをやるかどうかは「エリアの競合密度で判断する」。都市部でチラシに月5万円使うなら、その予算でGoogleマップの口コミ獲得施策(患者への依頼設計、院内POPなど)に投じた方が費用対効果は高い。
なぜGoogleマップが最優先なのか。
患者が整骨院を探す行動を再現してみる。
「腰が痛い→スマホを取り出す→Googleで『腰痛 整骨院 神戸 三宮』と検索する→マップに出てきた院の口コミを3〜4件見る→写真を見る→予約ボタンを押す」
このフローで「Googleマップに出ない・口コミが少ない・写真がない」院は存在しないも同然だ。
Googleマップ最適化でやることは実はシンプルだ。
今月から始められるMEO強化4ステップ
Googleビジネスプロフィールの「投稿」を週2回更新する
→ 「今日の症状ケース」「患者の声(本人確認済)」「季節に合わせた情報」などを投稿する
院内で「口コミお願いカード」を配る
→ 「施術後に感想を書いてもらえると励みになります」というQRコード付きのカードを渡す。月3〜5件増えるだけで半年後に大きな差が出る
写真を最低20枚以上アップする
→ 院内・施術室・スタッフの笑顔・設備。「どんな院か」が見えると不安が下がり、予約率が上がる
返信を全ての口コミに付ける
→ 口コミへの返信は「他の見込み患者へのメッセージ」でもある。「ありがとうございます」の一言でも、返信がある院と無い院では印象が大きく違う
費用:月0〜3,000円(カード印刷代のみ)
効果:3〜6か月で口コミ数2〜3倍、予約数10〜30%増(実績ベース)
「SNSを毎日投稿しましょう」というアドバイスが飛び交っている。これは半分正しく、半分間違いだ。
間違っている部分:量より質
毎日投稿しても、内容が「今日も元気に営業中!」「春のキャンペーン!」だけでは患者は増えない。内容のない投稿を100回続けても、フォロワーは増えず認知にもつながらない。
正しい部分:発信は必要だが「種類」を選ぶ
SNSで整骨院の集客に効くコンテンツには共通点がある。「この情報は自分の悩みに刺さる」と思ってもらえるものだけだ。
効果の高いコンテンツ例:
「ランニング膝(腸脛靭帯炎)のセルフケア3選」
「デスクワーク後の肩こりをその場で解消するストレッチ」
「産後に骨盤矯正を受けるベストタイミング」
これらは「検索されるキーワード」と連動しており、Googleの検索結果やInstagramの発見タブにも出てきやすい。月4本の「刺さる投稿」は、毎日の「お知らせ投稿」30本より集客効果が高い。
口コミ紹介は全集客手法の中で最もCPA(患者獲得単価)が低い。しかし多くの院は「口コミが来たらラッキー」という受動的な姿勢でいる。
口コミ紹介は「設計できる」。
口コミが起きる構造を作る3ステップ
ステップ1:感動体験を作る
口コミは「期待を超えた体験」が起点だ。「院名を忘れていた患者が思い出して紹介してくれる」ことはない。「先生にしか診てもらいたくない」「ここに来て本当に良かった」という体験を設計する。
具体的には:施術後に「施術前と後の写真を並べて見せる」「可動域の変化を数値で見せる」「本人が体感できる変化を言語化する」など。
ステップ2:紹介しやすい状況を作る
友人を紹介する側は「紹介して失敗したら申し訳ない」という心理ブレーキがある。これを外すのが「紹介保証」的な仕組みだ。「もし来てみて合わなければ、初回無料で返金します」という言葉一つで、紹介者のハードルは大幅に下がる。
ステップ3:紹介を依頼する
何もしないと口コミは起きない。施術後に「もし身近で腰痛・肩こりで困っている方がいれば、ぜひ声をかけてあげてください」と一言添えるだけで、口コミ発生率は明らかに変わる。「お願いするのが恥ずかしい」という心理は捨てる。患者が本当に良い体験をしているなら、依頼はお願いではなく「その患者の友人を助けるための情報提供」だ。
📌 第7章の急所
兵庫の集客で最もROIが高いのは「MEO(Googleマップ)強化」と「口コミ紹介設計」。ポスティングは競合密度が低いエリア(但馬・淡路)でのみ有効。SNSは「毎日投稿」ではなく「月4本の刺さる投稿」に絞る。集客を始める前に「既存患者の継続率と通院頻度を把握する」ことが最優先だ。
対象エリア:神戸市中央区・兵庫区・灘区
主要ターゲット:20〜40代のオフィスワーカー・飲食業従事者
コンセプト
「三宮の仕事帰りに30分で肩こり・腰痛リセット」。完全予約制・夜21時まで・5,000〜7,000円の自費施術を軸に、職場口コミ紹介で患者を獲得する。
現実的な集客手順
① Googleマップ口コミを3か月で20件超に引き上げる(MEO対策)
② 初診患者に「職場に同じ悩みの方がいたらこのカードを渡してください」と紹介カードを渡す
③ 紹介した患者・された患者の両方に「次回1,000円引き」等の還元をする
④ Instagram Reelsで「3分でできる座り仕事の肩こり解消法」を月2〜4本投稿する
数値目標(現実的な6か月後)
月新患数:20〜30名
月間売上:80〜120万円(自費比率70%以上)
Googleマップ口コミ:20件以上・評価4.3以上
対象エリア:姫路市・加古川市・高砂市
主要ターゲット:30〜50代の製造業従事者(腰痛・肩こり・手首疾患)
コンセプト
「播磨のものづくりを支える、職人の身体専門院」。近隣の工場・製造業企業に法人契約を提案し、安定した集客基盤を作る。
現実的な集客手順
① 半径3km以内の工場・製造業企業をリストアップ(10〜20社)
② 総務・安全衛生担当宛に「腰痛予防講座(無料・1時間)の提案レター」を送付
③ 反応があった会社に訪問、セミナーを実施
④ セミナー参加者に「初回無料体験券」を配布
⑤ 3社と月額法人契約を結べれば月20〜60名の安定集客が確立する
現実的な到達目標(12か月)
法人契約:3〜5社
月間来院数:80〜120名
月間売上:70〜100万円(法人契約+個人合算)
対象エリア:芦屋市・神戸市東灘区・灘区
主要ターゲット:30〜50代の高所得層・専業主婦・スポーツ愛好家
コンセプト
「通うだけで身体が変わる。高所得層のためのプレミアム整骨院」。完全自費・完全予約制・単価8,000〜15,000円。
現実的な集客手順
① 「産後骨盤矯正専門」「姿勢改善専門」のどちらか1軸に特化する
② ホームページ・Instagramのビジュアルを「高級感のある空間」に揃える
③ 地域のスポーツクラブ・ヨガスタジオ・フィットネスジムとのコラボを提案する(紹介協定)
④ 口コミが出るほどの体験を設計し、地域ママネットワークへの浸透を図る
このエリアで保険施術を軸にするのは戦略的に「もったいない」。同じ施術時間で保険の10倍以上の収益を生む自費モデルに完全移行する価値がある。
対象エリア:豊岡市・養父市・朝来市
主要ターゲット:50〜70代の農業・林業従事者・観光客
コンセプト
「城崎・出石・竹田城の里で、地域を支える唯一の整骨院」。競合が少ない環境で「地域のかかりつけ院」ポジションを確立する。
現実的な集客手順
① 農協・JA・商工会の会合に顔を出し、地域コミュニティに溶け込む
② 「農業従事者の腰痛・膝痛」に特化した施術プログラムを打ち出す
③ 城崎温泉のホテル・旅館と「観光客向けボディケア紹介協定」を結ぶ
④ 高齢患者向けに「送迎サービス」または「訪問相談(月1回)」を実施する
現実的な到達目標
都市部と同じ「月100万円」を目指す必要はない。月50〜60万円の安定売上と、地域での圧倒的な信頼ポジションを確立することが、但馬エリアでの「勝ち」だ。
対象エリア:神戸市・西宮市・宝塚市
主要ターゲット:20〜45歳のアマチュアランナー・サッカー・野球愛好家
コンセプト
「神戸マラソン・六甲山トレイルの選手を支える、スポーツ特化整骨院」。スポーツコンディショニング専門で完全自費化。
現実的な集客手順
① 「神戸マラソン完走のための膝・足首ケア」というテーマでYouTube動画・Instagram Reelsを発信する
② 地域のランニングクラブ(神戸・西宮に20〜30クラブが存在)に体験施術の案内を送る
③ スポーツ少年団(サッカー・野球)のコーチに「選手の障害予防セミナー無料実施」を提案する
④ 「ヴィッセル神戸サポーター向けプロモーション」(スタジアム周辺でのチラシ配布)
数値目標
月間新患数:15〜25名
平均単価:8,000〜12,000円
月間売上:80〜120万円(完全自費)
📌 第8章の急所
兵庫の勝ちパターンに共通するのは「地域×専門×現実的な集客手順」の三角形が揃っていること。「新規を取ろう」という目標ではなく「この人に来てほしい・このルートで来てもらう」という設計まで落とし込んだ院だけが動ける。
兵庫は「急増中の競合・明確なエリア格差・現実路線の施策が機能する市場」だ。理想論より行動量と正確な現状把握が先に来る。「新規を増やせ」というアドバイスより「今いる患者の継続率を測れ」というアドバイスの方が、兵庫の院に効く。
今週中にできること(費用:0円)
Googleビジネスプロフィールにログインして「写真」を5枚追加する
先月の月間新患数・平均通院回数・継続率を計算する
直近の口コミ全件に返信コメントを書く
今日来院した患者1人に「口コミをお願いカード」を渡す
今月中にできること(費用:月3,000〜10,000円)
「口コミお願いカード」を印刷して院内に設置する
Instagramに「地域の人の悩みに刺さる投稿」を4本作る
播磨エリアなら近隣の工場に「腰痛予防セミナー提案レター」を5社送る
競合院のGoogleマップを3院チェックして「自院が勝てるポイント」を探す
3か月かけてやること(費用:月3〜5万円以内)
Googleマップ口コミを月3件ペースで増やす施策を継続する
月次で「新患数・継続率・自費比率」を記録し始める
自費メニューを1つ作る(今あるものを価格と説明文を付けてメニュー化するだけでOK)
地域の異業種(美容室・ジム・整体院)と紹介協定の打診をする
最後に、一番大切なことを言う。
「MEOが大事なのはわかった。でも忙しくてまだ始められていない」
「口コミ設計が重要なのは理解した。でも何から手を付ければ…」
このループから出ることが、経営改善の唯一のスタート地点だ。
兵庫県の整骨院市場は今も週に1院ペースで競合が増えている(月4〜5院)。「競合が増えてから動く」では遅い。
完璧な計画が揃ってから動くより、不完全でも今週動いた方が6か月後の結果は大きく変わる。
このレポートが、「今日何か一つ動く」きっかけになれれば十分だ。
兵庫県の整骨院市場を整理する。
市場の基本スペック
施術所数:2,459院(R4確定値)
競合密度:約45院/10万人(全国平均より高く・大阪より低い)
増加トレンド:R2→R4で103院増(全国1位の増加ペース)
総人口:約543万人
兵庫市場の攻略3原則
エリアを選ぶ:神戸・阪神・播磨・但馬・淡路は全く異なる市場。同一戦略は通じない
集客の順番を守る:現状把握→MEO強化→口コミ設計→SNS→ポスティングの順。いきなりポスティングから入らない
今日動く:競合は毎月増えている。計画が完璧になるのを待っていると手遅れになる
兵庫は「正しい順番で正しい施策を実行した院」に報いる市場だ。
次回は第6回・神奈川県の整骨院マーケット分析をお届けします。
著者プロフィール:宮澤 駿
株式会社ピュアグロース ヘルスケア事業本部 本部長
大学卒業後、株式会社船井総合研究所に入社。入社後は12年間、整骨院を中心に治療院業界のコンサルティングに特化し、成功事例企業を多数輩出。業界のM&Aにも携わりながら、部長として社内マネジメントも経験。「お客様の純粋な成長」を実現掲げるピュアグロースの理念に共感しヘルスケア事業本部を2026年4月に立ち上げ。パーソナルパーパスは「業界・企業・人の可能性を信じ、伴走し、未来を共に創る」。
📌 公式サイト:https://pure-growth.co.jp/healthcare/
📌 note:https://note.com/pg_miyazawa0415
📌 X(旧Twitter):https://x.com/miyazawa_consul
📌 公式LINE:https://lin.ee/qTwV4Hg
📌 Facebook:https://www.facebook.com/profile.php?id=61580812024355
📌 YouTube:https://www.youtube.com/@pure-growth2
📌 Instagram:https://www.instagram.com/hayao_0415/
本レポートはR4衛生行政報告例(厚生労働省)確定データ・各種公開統計および業界調査をもとに執筆しています。