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COLUMN

【47都道府県 整骨院マーケットレポート②】東京都の整骨院市場分析

2026.05.27|整骨院マーケットレポート

東京都は、柔道整復師数・施術所数ともに全国1位の「日本最大の整骨院市場」だ。
しかし「最大」と「最良」は別物だ。市場が大きいからこそ競合も激しく、家賃も高く、採用も難しい。東京都内での整骨院経営は、規模の大きさに反比例するかのように「生き残ること自体が難しい市場」になっている。
一方で、正しいエリア戦略・ポジショニング戦略を取れば、全国どこよりも高い売上を実現できるのも東京都の特徴だ。単価が高く、患者の通院頻度も高く、自費移行が最も進んでいる市場——それが東京都の整骨院市場の実像だ。
このレポートでは、「東京都内のどこで」「誰に」「何で」勝つのかを、データと現場知見を組み合わせて徹底分析する。


第1章 東京都の基本プロフィール——「若い巨大市場」の構造

人口・世帯数の現状

東京都の総人口は約1,396万人(令和5年推計)。全国47都道府県のうち最大の人口を抱え、全国人口の約11%が集中している。
指標数値総人口約1,396万人(令和5年推計)世帯数約783万世帯65歳以上(高齢化率)約22.7%(全国平均29.1%を大幅に下回る)生産年齢人口比率(15〜64歳)66.5%(全国最高水準)特別区(23区)人口約978万人多摩地区人口約437万人
高齢化率22.7%は全国平均(29.1%)を大幅に下回り、東京都の整骨院市場は全国で最も「現役世代が厚い」市場だ。東京都では最初から現役世代が主力ターゲットになる。

生産年齢人口の厚みと現役世代需要

東京都の生産年齢人口(15〜64歳)は約928万人。この数字は長野県の総人口(199万人)の4.7倍だ。
この現役世代の中でも整骨院にとって特に重要なのが:
① オフィスワーカー層(20〜50代) 東京都は国内最大のオフィス集積地だ。IT・金融・商社・メディア・コンサル——デスクワーカーが産む「慢性的な頸肩腕症候群・腰痛・頭痛」は、東京都の整骨院需要の最大の源泉だ。
② 子育て世代(25〜40代) 共働き世帯が多い東京では、産後の骨盤矯正・育児疲労ケア・慢性的な疲労回復ニーズが高い。特に城西・城南エリア(世田谷・杉並・練馬等)の住宅地では、この層が主力患者になる。
③ スポーツ・アクティブ層(20〜45代) 都市マラソン(東京マラソン参加者5万人超)、フィットネス文化の浸透、ランニング・格闘技・サッカー等のアマチュアスポーツ人口。この層のスポーツ障害・コンディショニング需要は全国最大規模だ。
④ インバウンド・在日外国人(全年齢) 東京都内の外国人登録者数は約60万人(令和5年)。多様な文化的背景を持つ層だが、英語・中国語対応可能な整骨院は慢性的に不足しており、この需要はほぼ無競争に近い。


【急所①】 東京都の整骨院市場は「現役世代8割・高齢者2割」の比率で動く。 他の都道府県の「高齢者中心」モデルをそのまま持ち込むと外れる。 全国で最も「デスクワーカー×スポーツ人口×若年層」を主力に設計すべき市場だ。


第2章 施術所数と競合密度——「日本一の施術所密度」の実態

全国断トツ1位の規模感

厚生労働省「衛生行政報告例(令和4年)」によれば、東京都の就業柔道整復師数は11,753人(全国78,827人中・シェア14.9%・全国1位)。
第2位は大阪府(9,575人)、第3位は神奈川県(5,856人)。東京都は2位大阪の約1.23倍、3位神奈川の約2倍という圧倒的な規模感だ。
都道府県柔道整復師数(R4)全国順位東京都11,753人1位大阪府9,575人2位神奈川県5,856人3位埼玉県4,546人4位千葉県3,788人5位愛知県3,122人6位長野県1,118人参考

施術所数と競合密度の推計

柔道整復師数から施術所数を推計する(全国の師数/施術所比率を適用):
東京都施術所数推計:約6,500〜7,500院
競合密度を計算すると:
約7,000院 ÷ 1,396万人 × 10万人 ≒ 約50院/10万人
この数字は全国平均(約40院/10万人)を大きく上回る。しかし東京都の場合、平均値よりエリア内の格差が問題だ。
エリア人口密度推計競合密度都心5区(千代田・中央・港・新宿・渋谷)超高密度推計80〜100院/10万人超城東・城西・城南・城北(住宅密集区)高密度推計50〜70院/10万人多摩地区中密度推計30〜45院/10万人
都心部では競合密度が突出して高い一方、多摩地区には相対的な空白エリアが残っている。


【急所②】 東京都の「平均競合密度50院/10万人」は参考値に過ぎない。 実態は都心80〜100院超 vs 多摩30〜45院という「二極化した競合地図」だ。 都心で埋もれるより、多摩の良立地を取る戦略が、ROIで圧倒的に有利な場合が多い。


第3章 東京都特有の3大市場特性

他都道府県と東京都を決定的に差別化する3つの特性がある。

特性① ターミナル駅経済圏——「駅チカ5分」が全てを決める

東京都の整骨院市場は、「人の流れ=駅の乗降客数」に完全に支配されている。

  • 新宿駅:1日乗降客数約350万人(世界最多)

  • 渋谷駅:約180万人

  • 池袋駅:約270万人

  • 品川駅:約44万人

  • 上野駅:約20万人

これらのターミナル駅から徒歩5分以内の物件と10分以上の物件では、患者数に3〜5倍の差が出ると言われている。東京都の立地戦略は「駅からの距離」が経営の生死を分ける最重要変数だ。
「良い院長×良い施術×悪い立地」vs「普通の院長×普通の施術×良い立地」——東京都では後者が圧倒的に勝つ。
一方で、駅チカ好立地の家賃は月30〜80万円に達する場合もある。立地投資のROIを冷静に計算しないと、集患できても家賃に食われる「売上はあるが儲からない院」になる。

特性② 自費化最先進都市——保険依存率が最も低い市場

東京都は全国で最も「自費化」が進んでいる整骨院市場だ。
背景には複数の要因がある。
① 患者のサービス感度が高い 東京のビジネスパーソンは、美容院・ジム・マッサージ等のプライベートサービスに惜しみなく投資する文化がある。整骨院でも「効果があれば払う」「体験がよければ続ける」という判断ができる層が厚い。
② 競合との差別化として自費が機能する 競合密度が高い東京では、保険施術の価格(ほぼ横並び)では差別化できない。自費メニューの導入が「他院との差別化」として機能し、積極的に展開している院が多い。
③ 院の密集による「整骨院リテラシー」の向上 院が多いほど患者の比較経験が増え、「どこが良いか」を判断できる。その結果、「安くて普通」より「少し高くて明らかに良い」を選べる患者層が厚くなっている。
具体的な自費メニューの展開例(東京で先行している院の事例):

  • 初回体験コース(3,300円〜)→ 月額会員(月12,000〜25,000円)への誘導

  • スポーツコンディショニング(1回5,000〜8,000円)

  • 産後ケアプログラム(6回コース30,000〜50,000円)

  • ストレッチ×トレーニング複合プラン(月額15,000〜30,000円)

特性③ 採用最難関都市——「人が採れない」問題の最前線

東京都の整骨院経営者が最も頭を抱える問題は「採用」だ。
東京都の医療・福祉系有効求人倍率:推定3.5〜4.5倍(全国最高水準)
これは「1人の求職者に対して3.5〜4.5件の求人がある」状態を意味する。求職者が完全に選ぶ側であり、院側は「選ばれる院」にならないと内定に至らない。
結果として:

  • 給与水準が全国最高:柔道整復師の求人給与(東京)= 新卒25〜28万円、経験3〜5年28〜35万円、管理職35〜45万円

  • 採用広告費が高騰:求人媒体掲載費が月20〜50万円に達するケースも

  • 離職率が高い:近隣の院に引き抜かれるリスクが常にある

採用コストと離職リスクをコントロールできているかどうかが、東京での多院展開成否の鍵だ。


【急所③】 東京都の3大リスクは「高家賃・採用難・離職率」。 この3つをコントロールできない院は、売上が高くても利益が出ない。 「収益モデルの設計力」が、東京では他のどの都道府県より厳しく問われる。


第4章 主要プレイヤー分析——チェーン激戦と多摩の空白

全国チェーンが最も集積するエリア

東京都は全国展開チェーンが最も多く進出しているエリアだ。ほぼすべての全国規模グループが都内に複数院を展開しており、「名前の知れたチェーン院」が競合に存在することが前提となる。
東京都内での主要展開グループ(一般情報):
グループ分類特徴全国展開FC型フランチャイズで全国数十〜百院超。都内主要駅周辺に集中出店都市型グループ院関東圏中心に5〜20院展開。院長権限が強く均質性は低めスポーツ特化型アスリート向けに特化。スポーツ施設・ジム隣接型が多い美容×整骨 複合型産後ケア・骨盤矯正・EMS等を組み合わせた女性特化型鍼灸×整骨 複合型鍼灸師との協業で自費単価を上げる複合施術院

都心部の「飽和」と多摩の「白地」

都心・副都心エリア(新宿・渋谷・池袋・品川周辺) 主要駅徒歩5分圏内は、ほぼすべての好立地が埋まっている状態だ。競合密度が非常に高く、新規出店しても「すでに競合が多い」状況から始まる。
城西・城南エリア(世田谷・杉並・目黒・大田等) 住宅密集地で安定した需要があるが、ここも既存院が充実しており差別化が必須。子育て世代向けの産後ケア・女性特化型で隙間を狙う戦略が有効。
城東エリア(足立・葛飾・江戸川・墨田・江東) 下町・製造業の残る地域で、比較的競合密度が低い穴場エリアが存在する。医療アクセスが悪いエリアもあり、地域密着で安定した患者基盤を作れる。
多摩エリア(八王子・立川・町田・府中・調布等)
このシリーズで東京都の「戦略的急所エリア」として注目するのが多摩地区だ。
多摩地区は人口約437万人を擁しながら、23区と比べて競合密度が低く、家賃も相対的に安い。主要ターミナル駅(八王子・立川・町田・府中等)周辺には、まだ高品質な整骨院による「先行者獲得」が可能な立地が残っている。
多摩地区の優位点:

  • 競合密度30〜45院/10万人(都心の半分以下)

  • 家賃水準が23区比で30〜50%安い

  • ファミリー層・子育て世帯が厚い(産後ケア・スポーツ少年需要)

  • 八王子・立川などターミナル駅の乗降客数は十分に高い


【急所④】 「東京出店=都心」という思い込みが最大の罠。 都心は家賃・競合・採用の三重苦。多摩の主要駅前は人口・需要・採用のバランスが取れた「穴場」だ。 東京都内への初出店・多院展開を考えるなら、多摩エリアを最初のターゲットにするべき理由がある。


第5章 採用市場分析——東京の採用戦争に勝つための戦略

有効求人倍率と給与水準の実態

東京都の整骨院業界における採用環境は、全国で最も厳しい。医療・福祉系全体の有効求人倍率は3.5〜4.5倍と推計され、柔道整復師に特化すれば倍率はさらに高い。
東京都における柔道整復師の求人給与水準:
雇用形態月収水準正社員(新卒〜3年)月25〜28万円正社員(経験3〜5年)月28〜35万円正社員(管理職・院長代理)月35〜45万円正社員(分院長・エリアマネージャー)月45〜60万円
全国水準と比べると月5〜8万円高く、これが採用コストの実質的な上昇を意味する。売上が高くても人件費率が高ければ利益は出ない。

「選ばれる院」になる4つの条件

東京での採用を勝ち抜くには、給与だけでは戦えない。求職者(特に20〜30代の有資格者)が「この院を選ぶ理由」を作ることが必須だ。
① キャリアパスの明確化 「入社後どうなれるか」が見えない院は選ばれない。3年後に院長・5年後に分院長というロードマップを可視化できている院は、採用競争で有利だ。
② 技術教育制度 東京の若い柔道整復師は「稼ぐより学びたい」という傾向が強い。社内勉強会・外部セミナー参加支援・資格取得補助が採用の決め手になるケースが多い。
③ SNS・広報での院の見える化 Instagram・TikTokで院の日常・患者の声・スタッフの雰囲気を発信している院は、求職者からの自然なエントリーが増える。東京では「患者向けSNS=採用広告」として機能する。
④ 副業・フリーランス採用の活用 東京では副業OKの院も増えている。非常勤・業務委託の柔道整復師を確保できれば、繁忙期の対応力が上がり、常勤採用の負担も下がる。


【急所⑤】 東京の採用は「給与を上げれば採れる」時代が終わっている。 キャリアパス・教育・院文化の発信が、採用コストを最も効率的に下げる投資だ。 「選ばれる院づくり」は集患戦略と採用戦略を同時に解決する一手になる。


第6章 自費化の最前線——東京モデルが全国の未来を示す

東京都の保険→自費シフトの現状

東京都の整骨院は、全国で最も「保険から自費への転換」が進んでいるエリアだ。
全国的な流れとして、柔道整復療養費は過去10年で緩やかに減少している。東京都の先行院はこの流れを先読みし、すでに自費売上比率50〜80%以上を実現しているケースも珍しくない。
東京で自費移行が進む構造的理由:

  1. 患者の可処分所得が高い 東京都の平均年収は全国1位。「健康に投資する」意識と実際の支払い能力が揃っている。

  2. 競合との差別化ニーズが高い 保険施術は内容・価格がほぼ均一。自費メニューは院ごとに差別化でき、「この院でしか受けられない」を作れる。

  3. フィットネス・美容市場の成熟 パーソナルトレーニング(月3〜6万円)や美容エステ(1回1〜3万円)を当たり前に使う層が東京には厚い。整骨院の自費施術は「その延長線上」として受け入れられやすい。

東京型自費モデルの事例パターン

パターンA:「ハイブリッド型」 保険+自費の併用。既存患者を保険で受け入れながら、自費メニューへの移行を誘導。安定した移行期の経営モデル。
パターンB:「完全自費特化型」 保険を使わず全額自費。価格設定の自由度が高く、高単価化しやすい。ただし集患の初速が遅くなるため、SNS・WEBマーケティング力が必須。
パターンC:「月額会員制型」 定額制(月12,000〜30,000円)で月2〜8回通い放題。解約率が低く、経営の予測可能性が高い。東京の現役世代には「サブスク」モデルが馴染みやすい。


【急所⑥】 東京都の自費移行成功院は、3つを揃えている。 ①高単価に見合う「施術の質・体験の質」、②患者教育の仕組み(初回カウンセリング・院内説明)、③SNS・Googleによる集客力。 この3つが揃えば、東京都での自費率50%超は現実的な目標になる。


第7章 エリア別市場機会マップ——「東京の地図」を読む

東京都を6エリアに分けて市場特性を整理する。

都心・副都心エリア(千代田・中央・港・新宿・渋谷・豊島)

人口規模:各区20〜35万人・乗降客数は国内最大水準 競合密度:推計80〜100院/10万人以上(最高密度) 家賃水準:スケルトン10〜30坪で月賃料40〜100万円超
最も「高リスク・高リターン」のエリアだ。乗降客が多く集患ポテンシャルは高いが、競合密度・家賃・採用コストがすべて最高水準に達している。
現役世代需要:IT・金融・コンサルタント等のハイキャリア層が厚い。1回8,000〜15,000円の高単価自費施術でも支払い能力がある層が存在する。施術の質と体験価値で「指名率」を作れれば強力な牙城になる。
新規参入より、実績を積んでから二号店として都心出店する「ステップアップ戦略」が現実的だ。

城西エリア(世田谷・杉並・練馬・中野)

人口規模:4区合計約180万人 競合密度:推計50〜65院/10万人 特徴:住宅地・教育熱・子育て世帯
現役世代需要:25〜40代の子育て世帯が多い。産後ケア・骨盤矯正・小児(子どものスポーツ障害)への特化が有効。「子連れOK」「ベビーカー入店可」などの環境整備が集患に直結する。土日の利用需要が高く、週末診療時間の設定が競合との差別化になる。

城南エリア(品川・目黒・大田・港南)

人口規模:推計130万人 競合密度:推計50〜70院/10万人 特徴:住宅地+オフィス混在。高所得者層が厚い。
現役世代需要:品川駅は新幹線・リニア予定地であり、ビジネスパーソン流動が非常に高い。高所得・健康意識高めのビジネスマン向けに「コンディショニング特化」の高単価自費院が成立しやすい。

城東エリア(足立・葛飾・江戸川・墨田・江東)

人口規模:5区合計約230万人 競合密度:推計35〜55院/10万人 特徴:製造業残存・下町・比較的地価が安い
現役世代需要:工場・物流倉庫など肉体労働者が多い。職業性腰痛・膝痛の保険対応が安定した需要を生む。他エリアより「地域の信頼を積み上げた院が強い」傾向があり、長期的な地域密着戦略が有効。競合密度が相対的に低く、初出店エリアとしても現実的だ。

城北エリア(文京・豊島・北・荒川・板橋)

人口規模:5区合計約130万人 競合密度:推計50〜65院/10万人 特徴:大学・医療機関集積。多様な層
現役世代需要:大学が多く学生人口が厚い(スポーツ障害・試合前ケア需要)。豊島区・板橋区は商業地と住宅地が混在し、繁華街需要と地域密着の両立ができるエリアだ。

多摩エリア(八王子・立川・町田・府中・調布等)

人口規模:約437万人(長野県全体の2.2倍) 競合密度:推計30〜45院/10万人(23区の半分以下) 家賃水準:23区比30〜50%安
このシリーズで東京都の「最大の戦略的機会」として位置付けるのが多摩地区だ。
八王子市(人口56万人)・立川市(人口19万人)・町田市(人口43万人)という中核都市群は、それぞれ独立した商業圏を形成しており、乗降客数も十分に高い。にもかかわらず、競合密度は23区の半分以下、家賃は3〜5割安という経営コスト面での優位性がある。
現役世代需要:多摩地区はベッドタウン型であり、20〜40代のファミリー世帯が多い。朝の通勤で都心に出るビジネスパーソンが夕方・土日に整骨院を利用するパターンが主流。
採用面でも、多摩エリアは都心より若干採用しやすく、都内在住の柔道整復師を採用できる可能性がある。


【急所⑦】 東京での出店戦略は「エリアのコスト構造」から逆算すること。 都心:高家賃・高単価で採算が取れる自費特化院のみ。 多摩:相対的に低コスト・高需要で、最初の「黒字モデル」を作るのに最適。 多摩で黒字モデルを確立してから都心に攻めるのが、東京での多院展開の王道だ。


第8章 東京都での整骨院経営——成功の方程式

勝ちパターン① デスクワーカー特化×月額会員型

対象エリア:新宿・渋谷・品川・豊洲等のオフィス集積地駅前 ターゲット:20〜40代のIT・金融・商社等のビジネスパーソン 強み:高単価・リピート安定・自費移行しやすい
肩こり・腰痛・頭痛に悩むデスクワーカーに対して、「月額コンディショニングプラン(月12,000〜25,000円)」を基本に据える。施術後のストレッチ指導・姿勢改善エクササイズを組み合わせ、「通うほど良くなる」体験設計を作る。
初回の体験コースと問診カウンセリングの質が全てを決める。1回目で「この院は違う」と感じさせられるかどうかだ。
数値目標イメージ

  • 月額会員150名×月18,000円 = 月270万円

  • スポット施術30名×月6,000円 = 月18万円

  • 合計:月売上約288万円(保険ゼロで成立)

勝ちパターン② スポーツコンディショニング特化型

対象エリア:東京マラソンコース沿線・フィットネス集積地(代々木・恵比寿・赤坂等) ターゲット:20〜45代のランナー・格闘技・ゴルフ・テニス等競技者 強み:高単価自費・紹介連鎖が起きやすい・SNS映え
「競技を続けながら治す」というコンセプトで差別化する。週末プレイヤーにとって「試合・大会に向けて体を整える場所」として認知されれば、月2〜4回の定期来院が続く。
スポーツブランドとのコラボ・ランニングコミュニティへの協賛・SNS(特にInstagram)での競技者コミュニティへの発信が集患の核になる。

勝ちパターン③ 産後ケア×女性特化型(城西・城南住宅地)

対象エリア:世田谷・杉並・目黒・練馬等の子育てエリア ターゲット:産後0〜2年の30代女性、育児疲労の20〜40代女性 強み:競合が少ない・高LTV・口コミが起きやすい
産後骨盤矯正は整骨院の自費化の中で「最も単価が高く・最も口コミが起きやすい」メニューだ。産後の体の変化について丁寧に教育し、6〜10回コース(30,000〜60,000円)で結果を出せれば紹介連鎖が始まる。
「子連れOK・個室・プライバシー配慮」の院内設計と、産婦人科・助産師・ベビー教室との紹介ネットワーク構築が成功要件だ。

勝ちパターン④ 多摩先行×地域ナンバーワン型

対象エリア:八王子・立川・町田・府中・調布の主要駅前 ターゲット:20〜50代の多摩在住者(ビジネスパーソン・ファミリー・シニア) 強み:相対的低競合・低コスト・採用しやすい・長期的に強い
都心の高コスト競争を避け、多摩の主要ターミナル駅前を先行取得する戦略。家賃が都心比30〜50%安いため、同じ売上でも利益率が大幅に高い。
「地域で一番」になることにフォーカスし、Google口コミ・地域SNSでの認知形成を徹底する。1院目で地域ナンバーワンを確立してから、多摩地区内で2院・3院目と展開するグループ化戦略が現実的だ。


【急所⑧】 東京都で勝つための共通原則は1つ:「誰のための院か」を先に決めること。 デスクワーカーなのか、スポーツ人口なのか、産後ママなのか。 ターゲットが曖昧な「誰でも来てください型」は、東京の競争密度の中で確実に埋没する。


第9章 東京都市場の総合評価——投資判断の指標

5軸評価

評価軸評価理由
市場規模★★★★★
全国最大。柔道整復師数・施術所数ともに全国1位
競合密度★★★★★
全国最高水準。都心部は文字通り飽和状態
需要特性★★★★★
デスクワーカー・スポーツ・産後・インバウンドと需要が多様
採用環境★☆☆☆☆
全国最難関。倍率3.5〜4.5倍。給与・待遇の底上げ必須
自費化ポテンシャル★★★★★
全国で最も自費化が進んでいる。高単価モデルが成立しやすい

市場総合判定

東京都は「正しく戦えば最大の果実が得られるが、間違えれば最速で倒れる市場」だ。
市場規模・自費化ポテンシャル・需要の多様性はすべて全国最高水準。しかし競合密度と採用難もまた全国最高水準にある。
東京での成功は「立地・ターゲット・収益モデルの三位一体設計」にかかっている。

  • 立地:多摩の先行または都心の差別化特化

  • ターゲット:デスクワーカー・スポーツ・産後の明確な絞り込み

  • 収益モデル:月額会員制×自費中心で保険依存を最小化

この設計が最初から揃っている院が、東京都で中長期的に勝ち続けている。
この市場での成功の方程式は、一言で言えばこうだ。
「誰のための院かを決め、その一点で圧倒的になる」


【急所⑨(最終)】 東京都を一文で総括するなら: 「全国最大の市場は、全国で最もコストが高い戦場でもある。多摩の低コスト先行×自費特化×採用力が3枚の切り札。」 規模に飲み込まれず、自分が圧倒的に勝てる「一点突破の場所」を見つけた院だけが東京市場を制する。


おわりに——「東京攻略」は整骨院業界の最前線

東京都の整骨院市場は、全国の市場トレンドの「5〜10年先を行く実験場」でもある。
自費化・月額会員制・SNS集患・高単価化・複合施術——これらの取り組みはすべて東京で先行し、やがて全国に広がっていく。東京都のマーケットを読むことは、「日本の整骨院業界の未来を読む」ことでもある。
次回は第3回をお届けする。


著者プロフィール:宮澤 駿
株式会社ピュアグロース ヘルスケア事業本部 本部長
大学卒業後、株式会社船井総合研究所に入社。入社後は12年間、整骨院を中心に治療院業界のコンサルティングに特化し、成功事例企業を多数輩出。業界のM&Aにも携わりながら、部長として社内マネジメントも経験。「お客様の純粋な成長」を実現掲げるピュアグロースの理念に共感しヘルスケア事業本部を2026年4月に立ち上げ。パーソナルパーパスは「業界・企業・人の可能性を信じ、伴走し、未来を共に創る」。
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※本レポートに記載のデータは、衛生行政報告例(厚生労働省・令和4年)、総務省統計局人口推計(令和5年)、各種業界調査・求人媒体の公開情報を基に集計・分析したものです。施術所数・競合密度等は推計値を含みます。

宮澤駿

この記事の監修者

宮澤 駿ピュアグロース株式会社 ヘルスケア事業本部 本部長

株式会社船井総合研究所で12年間、整骨院・治療院業界のコンサルティングに特化し、成功事例企業を多数輩出。業界のM&Aにも携わり、部長として社内マネジメントも経験。「お客様の純粋な成長」を掲げるピュアグロースにて、2026年ヘルスケア事業本部を立ち上げ。

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