無料経営相談

COLUMN

【47都道府県 整骨院マーケットレポート①】長野県の整骨院市場分析

2026.05.27|整骨院マーケットレポート

はじめに――なぜ「整骨院×地方市場」を分析するのか

整骨院業界は、全国に約5万件を超える施術所が存在する巨大な「日常医療」市場だ。コンビニよりも多いと言われる院数は今も増加し続け、特に地方都市では競合密度が急速に高まっている。

一方で、経営者の多くは「隣の院が増えた」「患者が来ない」という肌感覚だけを頼りに戦略を立てている。データに基づいた市場分析を行っている院は、業界全体から見ればほとんど存在しない。

このシリーズ「47都道府県 整骨院マーケットレポート」は、都道府県ごとの整骨院市場を定量データと現場知見で徹底分析し、経営者・新規参入者・グループ展開を考える事業者に対して、意思決定の根拠となる情報を提供することを目的としている。

第1回は長野県から始める。

長野県は人口減少・超高齢化が進む一方で、「健康長寿県」として全国に名を轟かせてきた特異な県だ。そして整骨院業界の視点では、全国でもほぼ唯一、スキー場内に接骨院が8施設も存在するという、他の追随を許さないユニークな市場特性を持っている。

数字を見れば「縮小する地方市場」に見える。しかし深く読み解けば、そこには確実な成長機会が存在している。


第1章 長野県の基本プロフィール——市場規模を測る「人口構造」

人口・世帯数の現状

長野県の総人口は約199万人(令和6年6月時点)。2024年2月についに200万人の大台を割り込み、今も緩やかな減少トレンドが続いている。

総人口 : 約199万人(2024年6月) 
世帯数 :約85万4千世帯 
65歳以上(高齢化率):646,057人・33.1%
75歳以上(後期高齢者率):19.2% 
県庁所在地 :長野市 
市町村数 :77市町村

人口減少そのものは確かに事実だ。しかし単純に「市場が縮む」と見ては判断を誤る。整骨院経営において重要なのは総人口よりも高齢者人口であり、特に後期高齢者(75歳以上)の絶対数だ。

長野県の高齢化率33.1%は全国でもトップクラスに高い。後期高齢者だけで38万人超が存在し、この層は慢性疼痛・転倒予防・生活機能維持のニーズが極めて高い。人口が減っても、整骨院の主力ターゲット層の絶対数は当面維持される構造になっている。

地理的特性——「4ブロック構造」を理解する

長野県は南北に約212km、東西に約120kmという縦長の地形を持ち、山地が県土の約80%を占める。この地理的特性が、市場構造を大きく規定している。

長野県柔道整復師会は県内を四信ブロックと呼ばれる4つのエリアに分けて管理している。

北信 (長野市・中野市・飯山市):県内最大の人口集積、新幹線沿線 
東信 (上田市・佐久市・小諸市):浅間山麓、東信越の玄関口 
中信 (松本市・塩尻市・安曇野市):第2の都市圏、アルプス観光の拠点 
南信 (諏訪市・伊那市・飯田市 ):製造業が集積する内陸工業地帯 

この4ブロック構造は、後述するグループ院の展開戦略を分析する上で非常に重要な視点になる。


【急所①】
長野県の市場は「人口減少」だけで判断してはいけない。
後期高齢者38万人超という絶対数と、健康長寿県ゆえの「予防ケア需要」が市場を下支えする。
縮む分母より、増える需要層に目を向けること。


第2章 施術所数と競合密度——本当の「激戦度」を測る

公式データが示す施術所数

整骨院市場の過熱度を測る最も信頼できる指標は、施術所数÷人口×10万人で計算する「競合密度」だ。

長野県内の柔道整復施術所数について、厚生労働省が毎年発表する「衛生行政報告例」では全国値・都道府県別集計が確認できる。ただしこのデータは集計から公表まで半年以上のタイムラグがある。

より精度の高いリアルタイムデータとして、今回は長野県が公表する「長野県柔道整復施術所名簿」(令和7年10月1日現在)を基礎データとした。この名簿は全44ページに及び、県内の施術所を保健所管轄ごとに網羅している。

名簿の実数集計(推計):

 長野市管内 :約200院 
 長野保健福祉事務所管内(須坂・千曲等) :約100院 
 松本市管内 :約120院 
 松本保健福祉事務所管内(塩尻・安曇野等) :約65院 
 上田管内 :約82院 
 佐久管内 :約85院 
 諏訪管内 :約80院 
 伊那管内 :約70院 
 飯田管内 :約100院
 北信管内(中野・飯山等) :約55院 
 大町管内 :約24院
 木曽管内 :4院 
合計 :約985院 

競合密度の計算と全国比較

長野県の競合密度を計算すると:

985院 ÷ 199万人 × 10万人 ≒ 約49.5院/10万人

全国平均の競合密度は概ね40院/10万人程度(衛生行政報告例ベース)とされており、長野県はこれを約10院上回る水準にある。

一般的に競合密度が高い都道府県としては大阪・愛知・東京といった都市圏が挙げられるが、長野県のような地方県で50院/10万人に達しているのは注目に値する。

なぜ長野県は競合密度が高いのか。いくつかの仮説が考えられる。

仮説①:健康意識の高さによる需要創出
健康長寿県として知られる長野県では、住民の健康意識が高く、整骨院への受診ハードルが低い可能性がある。需要があるところに供給が集まる。

仮説②:スキー・農業による傷害需要
スキーによる外傷、農業(リンゴ・レタス等)による腰痛・肩こりは、整骨院への恒常的な需要を生む。これが開業動機として機能してきた側面がある。

仮説③:観光・移住による新規開業増
長野県は近年、都市部からの移住者が増加している県の一つだ。医療系資格を持つ移住者が施術所を開業するケースも散見される。


【急所②】
長野県の競合密度は約50院/10万人。全国平均40院を大きく上回る「激戦県」だ。
「地方だから競合が少ない」という思い込みは危険。
エリア選定は管内別の実数データを必ず確認すること。


第3章 長野県特有の3大市場特性

他の都道府県と長野県を決定的に差別化する市場特性が3つある。これを理解せずに長野県市場を語ることはできない。

特性① 健康長寿県のパラドックス——「元気な高齢者」が生む予防ケア需要

長野県は長年「平均寿命・健康寿命ともに全国トップクラス」の「健康長寿県」として知られてきた。ところが整骨院経営の観点では、この「健康長寿」こそが大きな市場機会を生む。

「元気だから病院に行かなくてもいい」「多少の痛みは我慢する」という層ではなく、長野県の高齢者は健康を維持するために積極的にお金を使うという文化が根付いている。整骨院で言えば、保険外のメンテナンス通院・予防ケア・自費施術のニーズが高い。

全国的に整骨院業界では「療養費の削減」「保険請求の厳格化」により、保険依存型の経営モデルが限界を迎えつつある。この逆風が、健康意識の高い長野県市場では自費移行のチャンスとして機能する。

具体的に言えば:

  • 慢性腰痛の「ケアプラン型」通院(月4〜8回の自費コース)

  • 農業従事者向けの定期メンテナンスパッケージ

  • 65歳以上のフレイル予防・転倒防止プログラム

こうした自費メニューが受け入れられやすい土壌が、長野県には既にある。

特性② スキーリゾート冬季外傷特需——全国唯一のビジネスモデル

今回の施術所名簿の調査で判明した、長野県の最大のユニーク要素がこれだ。

県内に8施設のスキー場内接骨院が存在する。

鹿島槍ゲレンデ内 :大町市 
栂池ゲレンデ内 :北安曇郡小谷村 
マウントケア(小谷村) :北安曇郡小谷村 
斑尾高原スキー場内(令和7年9月最新) :飯山市
野沢温泉スキー場内 :下高井郡野沢温泉村
湯田中温泉エリア :下高井郡山ノ内町
竜王ゲレンデ内 :下高井郡山ノ内町 
髙井富士ゲレンデ内 :下高井郡山ノ内町

スキー場内の接骨院は、通常の施術所とは全く異なる経営モデルを持つ。

冬季(12〜3月)は外傷患者が殺到する。スキー・スノーボードによる骨折・捻挫・打撲は整骨院の得意分野であり、ゲレンデ内に施術所があることでリフト・救護室との連携も機能する。ピーク時には1日30〜50件の外傷対応を行う施術所も存在する。

一方で夏季は極端に患者数が落ちるという季節変動リスクがある。これを補うために温泉エリアとの連携、登山客の傷害対応、オフシーズンのメンテナンス需要取り込みといった工夫が求められる。

令和7年9月に斑尾高原スキー場内に最新の施術所が開設されていることからも、このニッチ市場がまだ成長段階にあることが分かる。

特性③ 農業県需要——リンゴ・レタス農家の腰痛・肩こり市場

長野県はリンゴ・レタス・白菜・ブドウなど農業が盛んな県だ。農業従事者の多くは慢性的な腰痛・肩こり・膝痛を抱えており、整骨院の安定した需要層になる。

農業従事者向けの特徴的な需要として:

  • 収穫期(9〜11月)の繁忙期に症状が悪化するパターン

  • 農閑期に集中通院する傾向

  • 農協・JA経由のコミュニティマーケティングとの相性の良さ

農村エリアでは「院長が農業の話ができる」「農繁期を理解した診療時間設定」が信頼獲得に直結する。都市型の接骨院チェーンが苦手とするニッチな強みだ。


【急所③】
長野県の市場を動かす3つのドライバー:
①健康長寿×自費ニーズ(保険→自費の移行が最もスムーズに進む県)
②スキーリゾート×冬季外傷(全国唯一の季節需要)
③農業従事者×慢性疼痛(JA連携が効く安定層)
この3つが重なるエリアが「長野県内の最強立地」になる。


第4章 主要プレイヤー分析——グループ院の展開状況と白地エリア

県内グループ院の勢力図

公式施術所名簿(令和7年10月)に基づき、複数院を展開するグループプレイヤーを抽出した。

①BJ整骨院(ノースサン):4院:長野市×2・中野市・上田市
→令和6年6月 上田市に新規出店 
②げんきやグループ: 4院: 松本市×3・上田市
→令和6年11月 上田市に新規出店 
一心道GROUP :4院: 松本市集中
→中信エリアでの面展開
③マーサメディカル :4院: 中野市・長野市×2・松本市
→北信〜中信に分散展開 
④ヒノデメディカル :3院 :長野市×2・須坂市
→令和7年9月 須坂市に最新出店
⑤ゼロスポ(MOVEACTION株式会社): 2院: 松本市・上田市
→令和7年2月 上田市に新規出店 

このデータが示す重要な事実を整理する。

【発見①】BJ整骨院の北信集中展開

BJ整骨院(ノースサングループ)は長野市に2院、中野市・上田市に各1院の計4院を展開する。北信ブロックへの集中展開が特徴で、直近では令和6年6月に上田市(東信ブロック)へ初進出している。北信から東信への拡大戦略が読み取れる。

【発見②】げんきや・一心道の中信集中

松本市を中心とする中信ブロックでは、「げんきやグループ(松本3院)」「一心道GROUP(松本4院)」が面展開を実施している。松本市は県内第2の都市圏(人口約24万人)であり、この2グループが中信の主要プレイヤーとして競合関係にある。げんきやは令和6年11月に上田市にも進出し、BJ同様に東信方面への展開を開始している。

【発見③】ゼロスポの急速展開

MOVEACTION株式会社が運営する「ゼロスポ接骨院」は、平成30年に松本市に1院目を開設後、令和7年2月に上田市へ2院目を出店した。約6年で2院という展開ペースだが、上田市出店のタイミングがBJの上田進出(R6.6)と重なっており、東信ブロックでの競争が激化していることを示している。

【発見④】ヒノデメディカルの北信攻略

ヒノデメディカルは令和7年9月に須坂市に最新店舗を出店した。須坂市は長野市の隣接都市(人口約4.6万人)であり、長野市郊外への展開戦略と読める。BJ整骨院が長野市に2院構えるエリアへの隣接出店でもあり、北信ブロックの競争が今後激しくなる予兆だ。

BJグループの「空白地帯」という戦略的機会

グループ院の展開状況を四信ブロック別に整理すると、明確な「空白地帯」が見えてくる。

ブロック | BJ整骨院 | げんきや | 一心道 | マーサ | ヒノデ |
北信 | ◎(2院) | — | — | ◎(2院) | ◎(2院) |
東信 | ○(1院) | ○(1院) | — | — | — |
中信 | ✗未進出 | ◎(3院) | ◎(4院) | ○(1院) | |
南信 | ✗未進出 | | | | |

BJ整骨院は中信・南信に一切進出していない。

BJ整骨院(ノースサングループ)は北信ブロックで確固たる存在感を示しているが、松本市(中信)・諏訪市・伊那市・飯田市(南信)は完全な未踏地となっている。

これは単にBJが「まだ展開していない」という話だけではなく、「他の大手グループも南信への本格展開が進んでいない」という事実でもある。

飯田管内(約100院)、諏訪管内(約80院)、伊那管内(約70院)を合わせた南信は合計約250院の市場規模を持つ。しかし競合グループ院はほとんど存在せず、地域密着型の個人院が支配するエリアだ。


【急所④】
BJ・げんきや・一心道など県内主要グループは「北信〜中信」に集中している。
南信(飯田・伊那・諏訪)は約250院の市場があるにもかかわらず、大手グループの空白地帯。
新規参入・グループ展開を考えるなら、南信への先行者利益は今がラストチャンスかもしれない。


第5章 採用市場分析——「人手不足」の実態と長野県の優位性

有効求人倍率から見る採用環境

整骨院の経営課題として、ほぼ全ての院が挙げるのが「採用」だ。柔道整復師・鍼灸師の有資格者は絶対数が少なく、全国的に慢性的な人手不足が続いている。

長野県の有効求人倍率(医療・福祉系):2.32倍
全国平均の有効求人倍率:3.31倍

この数字が意味することは明確だ。長野県は全国平均より採用しやすい環境にある。

求人倍率が低いほど「求人に対して求職者が多い」、つまり採用競争が緩やかだということだ。長野県の2.32倍は全国平均の3.31倍を大きく下回っており、東京・大阪・愛知などの大都市圏と比べると採用難易度は著しく低い。

長野県の給与水準

長野県における柔道整復師の求人給与水準(主要求人媒体調査):

 月収水準
 正社員(新卒〜3年) :月19.6万〜22万円
 正社員(経験3〜5年) :月23万〜26万円 
 正社員(管理職クラス) :月27万〜29.9万円 

東京都内の同水準より月3〜5万円程度低い水準だが、長野県の物価・住居費を考慮すると実質的な生活水準は遜色ない。移住を考える有資格者にとってはむしろ魅力的な条件になりうる。

採用競合の特徴

長野県の採用市場における競合を整理する:

直接競合:県内他院・大手グループ院
間接競合:介護施設・病院・スポーツジム(雇用資格を共有する施設)
首都圏競合:Uターン・Iターン人材の取り合い

特に注目すべきは「Uターン・Iターン採用」の可能性だ。長野県は近年、東京・名古屋からの移住者が増加している。長野県出身の柔道整復師が大都市で就職後、地元に戻りたいタイミングを狙う採用戦略は、競合が少なく有効だ。

また、長野県内には松本大学(健康科学学部)があり、地元で柔道整復師資格を取得した新卒人材の確保チャンネルとして機能する。大学との連携(インターン・院内実習受け入れ)は採用コスト削減の現実的な手段だ。


【急所⑤】
長野県の有効求人倍率2.32倍は全国平均3.31倍を大幅に下回る。
採用難に苦しむ大都市圏と比べれば「天国」に近い環境。
Uターン採用×松本大学連携で、採用コストを大幅に削減できる。


第6章 療養費トレンドと自費化の潮流

保険給付の縮小という構造変化

整骨院経営にとって最大の外部環境変化は、柔道整復療養費の削減・適正化方針だ。

厚生労働省の審議会では、長年にわたり柔道整復施術の保険適用範囲の見直しが続いている。主な論点は:

  • 「捻挫・挫傷」への継続的な保険請求の妥当性

  • 部位数の制限強化

  • 長期・多部位施術への算定適正化

  • 患者への「同意書」取得義務の強化

これらの規制強化は、保険請求依存型の経営モデルに直接打撃を与える。過去10年で全国の柔道整復療養費は緩やかな減少トレンドにあり、この傾向は今後も続くと見られている。

長野県における自費化移行の条件

この逆風を機会に転換できるかどうかは、地域の「自費施術受容度」にかかっている。

長野県は全国でも自費移行が進みやすい土壌を持つ。その根拠は:

① 健康投資意識の高さ
健康長寿県として医療・健康への自己投資意識が高い県民性。保険外でも「効果があると思えば払う」層が分厚い。

② 世帯所得と余暇支出のバランス
製造業・農業が基盤の長野県は、全国平均並みの可処分所得を持つ。温泉・スキーなど娯楽・健康への支出に積極的な文化がある。

③ 高齢者の現役継続志向
長野県の高齢者は農業・地域活動を継続する「現役高齢者」が多い。身体機能を維持することへの動機が強く、継続的なケア投資への説得がしやすい。

一方で注意すべき点もある。長野県の農村・中山間地域では、まだ「整骨院はケガの時に行くところ」という認識が根強い。自費メニューの導入には、院内での丁寧な教育(患者への説明・価値の見える化)が必須だ。

自費移行で先行する院のパターン

長野県内で自費化に成功している院(業界内の一般情報として)に共通するパターン:

  1. 症状別コースパッケージ化(腰痛改善コース・肩こりケアプラン等)

  2. 月額定額会員制度の導入(月4回〜のメンテナンス会員)

  3. スタッフの提案力トレーニング(保険→自費の院内導線設計)

  4. 介護予防・フレイル予防プログラム(市町村の補助事業との連携)


【急所⑥】
保険給付縮小は全国共通の逆風だが、長野県では「健康長寿県の自費ニーズ」が追い風になる。
カギは患者教育と院内導線。
自費移行に成功した院は、保険依存院より明らかに安定した経営ができている。


第7章 四信ブロック別 市場機会マップ

四信ブロックごとに市場特性と機会を整理する。

北信ブロック(長野市・中野市・飯山市)

人口規模:長野市約37万人・周辺含め約50万人
施術所数:長野市管内約200院+北信管内約55院
競合密度:北信全体で最も高密度

北信は県内最大の人口集積地であり、BJ整骨院・マーサメディカル・ヒノデメディカルが複数院を展開する最激戦区だ。新規出店には明確な差別化が必要で、「立地×専門性×集客力」の三拍子が揃わないと苦戦する。

一方、長野市の郊外・農村エリア(豊野・若穂・篠ノ井など)にはまだ整骨院密度の低いエリアが存在する。

東信ブロック(上田市・佐久市・小諸市)

人口規模:上田市約15万・佐久市約9.8万・合計約35万人
施術所数:上田管内約82院・佐久管内約85院
競合密度:中程度。グループ院の進出が加速中

BJ・げんきや・ゼロスポが相次いで上田市に進出した「東信攻略競争」が最も激しくなっているエリアだ。令和6〜7年の2年間で複数のグループ院が新規参入しており、競争環境は急速に変化している。

佐久市は長野新幹線(佐久平駅)沿線の利便性があり、群馬・埼玉からのUターン人材採用という独自の戦略も取りやすい。

中信ブロック(松本市・塩尻市・安曇野市)

人口規模:松本市約24万・安曇野市約9.4万・合計約45万人
施術所数:松本市管内約120院+松本保健福祉事務所管内約65院
競合密度:高。ただし観光×農業のダブル需要あり

げんきや・一心道が面展開する競争エリアだが、松本市は観光都市としての側面も強く(松本城・上高地)、観光客向けの外傷対応・翌日回復ケアという独自需要も存在する。

塩尻市・安曇野市はワイン・農業が盛んなエリアで、農業従事者需要が安定している。BJ整骨院が未進出の中信は、大手グループにとって残された主要ターゲットでもある。

南信ブロック(諏訪市・伊那市・飯田市)

人口規模:諏訪市約4.7万・伊那市約6.8万・飯田市約9.6万・合計約50万人
施術所数:諏訪管内約80院・伊那管内約70院・飯田管内約100院
競合密度:相対的に低。グループ院の空白地帯

このシリーズで特に注目する「戦略的急所エリア」が南信だ。

飯田市(約100院)は南信最大の施術所集積地だが、大手グループ院の参入はほとんどない。地域密着型の個人院が中心で、経営力・マーケティング力に差がある。

製造業(精密機械・電子部品)が集積する諏訪・伊那エリアは、工場勤務者の職業性腰痛・肩こりへの対応という安定需要がある。産業保健との連携(職場巡回・ストレッチ指導)を絡めたBtoBアプローチも有効だ。

また飯田市は「南信州」として独立した文化・経済圏を形成しており、名古屋方面からのアクセス(中央道飯田IC)も良好だ。愛知・静岡方面から移住してくる柔道整復師を採用する「中京圏人材採用戦略」が成立するエリアでもある。


【急所⑦】
四信ブロックで最も「先行者利益」が取れるのは南信(飯田・伊那・諏訪)。
大手グループ未進出、市場規模約250院、製造業×農業の安定需要——3拍子が揃う。
北信・東信の競争が激化するほど、南信の相対的な価値は上がる。


第8章 長野県での整骨院経営——成功の方程式

勝ちパターン① 健康長寿×自費特化型

対象エリア:長野市郊外・松本市・安曇野市
ターゲット:65〜74歳の元気な前期高齢者(農業・地域活動継続層)
強み:保険制度の変化に左右されない安定収益

「健康維持・予防ケア」を主訴とする患者に対して、月額定額の自費コース(月4〜8回・月額12,000〜20,000円)を中心に据える。この層は単価が高く、離脱率が低い。「かかりつけ整骨院」として認知されれば、10年単位での継続関係が築ける。

数値目標イメージ

  • 自費会員100名×月15,000円 = 月150万円(自費単体)

  • 保険患者50名×月平均6,000円 = 月30万円

  • 合計:月売上約180万円

勝ちパターン② スキーリゾート冬季特需×温泉メンテナンス型

対象エリア:白馬・野沢温泉・志賀高原周辺
ターゲット:スキー・スノーボード外傷患者(冬)+温泉・登山客(通年)
強み:全国唯一の季節需要。競合が入りにくいニッチ

冬季(12〜3月)に外傷患者で売上を最大化し、オフシーズンは温泉リゾート客向けの施術(スポーツマッサージ・リカバリーケア)で補完する。宿泊施設・ペンションとの提携により送客を確保するモデルが有効だ。

この立地では施術所の内装・雰囲気も重要で、「リゾートっぽい空間」「外国人スキー客への英語対応」が差別化になる。

勝ちパターン③ 農業従事者特化×JA連携型

対象エリア:安曇野市・飯田市・中野市・小布施町等
ターゲット:リンゴ・レタス・ブドウ農家(40〜70代)
強み:競合が少ない。コミュニティ内の口コミが強力

農業従事者は腰痛・肩こりが「職業的宿命」として受け入れられており、有効な施術を提供できれば驚くほどの口コミが発生する。農繁期に合わせた夜間・早朝診療(農家は早起き)、農協・JAでのリーフレット配布、農業共済組合との連携が集客の柱になる。

勝ちパターン④ 製造業BtoB×産業保健型(南信特化)

対象エリア:諏訪市・岡谷市・伊那市
ターゲット:精密機械・電子部品工場の従業員
強み:企業契約による安定集患。福利厚生費での単価UP

製造業が集積する諏訪・伊那エリアでは、企業の福利厚生として整骨院と法人契約を結ぶ「企業健康支援」モデルが有効だ。月定額の法人プランを提供し、従業員が割引価格で通院できる仕組みを作る。企業の健康経営推進ニーズと整骨院の安定集患ニーズが完全に一致する。


【急所⑧】
長野県内に「万能な勝ちパターン」はない。エリアの特性に合わせた特化戦略が必要。
松本なら自費特化、白馬ならスキー特需、安曇野なら農業特化、諏訪なら製造業BtoB。
「どこで」「誰に」「何で」勝つかを決めることが、長野県市場攻略の第一歩だ。


第9章 長野県市場の総合評価——投資判断の指標

最後に、整骨院経営者・グループ展開を考える事業者に向けて、長野県市場の総合評価を示す。

5軸評価

 評価軸 | 評価 | 理由 |
 市場規模 | ★★★☆☆ | 約985院・199万人。大都市圏に劣るが地方としては中規模 
 競合密度 | ★★★★☆ | 50院/10万人。全国平均を上回る激戦。エリア差大 
 需要特性 | ★★★★★ | 健康長寿・スキー・農業の3重需要。全国唯一のユニーク市場 
 採用環境 | ★★★★☆ | 有効求人倍率2.32倍(全国3.31)。大都市比で採用しやすい 
 自費化ポテンシャル | ★★★★☆ | 健康意識高く自費受容度が高い。成功事例が積み上がれば加速 

市場総合判定

長野県は「攻め方を間違えなければ、確実に勝てる市場」だ。

総人口は減少しているが、整骨院のコアターゲットである高齢者人口は維持される。競合密度は高いが、大手グループの空白地帯(南信)が残っており、先行者利益を取れる機会は今なお存在する。

採用環境は全国比で恵まれており、自費化を進める土壌も整っている。「健康長寿県」というブランドは、自費メニューの訴求において逆に強力な武器になる。

この市場での成功の方程式は、一言で言えばこうだ。

「エリア特性を読んで、特化戦略で先行する」

四信ブロックの需要特性を理解し、自院が最も強みを発揮できるエリアと戦略を組み合わせる。そうすれば競合密度が高くても、確実に患者を集めることができる。


【急所⑨(最終)】
長野県を一文で総括するなら:
「激戦だが、攻め方は多様。健康長寿×南信白地×採用優位が3枚の切り札。」
全国一律の展開戦略ではなく、長野県のユニーク市場特性を武器にできる経営者だけが、この市場を制する。


おわりに——このシリーズについて

「47都道府県 整骨院マーケットレポート」は、全国の整骨院経営者に向けた市場情報シリーズとして継続的に発行していく。

各都道府県の報告では:

  • 公式統計データに基づく施術所数・競合密度の定量分析

  • 都道府県固有の市場特性の質的分析

  • 主要グループプレイヤーの展開状況マッピング

  • 採用市場・給与水準の実態

  • エリア別の戦略的機会マップ

  • 経営モデル別の勝ちパターン提示

を毎回提供する。

整骨院業界では「現場の肌感覚」だけで経営判断が行われることが多すぎる。このシリーズが、データと現場知見を組み合わせた「根拠のある経営判断」を業界に広める一助になれば幸いだ。

次回は第2回をお届けする。お楽しみに。


著者プロフィール:宮澤 駿
株式会社ピュアグロース ヘルスケア事業本部 本部長
大学卒業後、株式会社船井総合研究所に入社。
入社後は12年間、整骨院を中心に治療院業界のコンサルティングに特化し、成功事例企業を多数輩出。
業界のM&Aにも携わりながら、部長として社内マネジメントも経験。
「お客様の純粋な成長」を実現掲げるピュアグロースの理念に共感しヘルスケア事業本部を2026年4月に立ち上げ。
パーソナルパーパスは「業界・企業・人の可能性を信じ、伴走し、未来を共に創る」。

【各種SNS・HP】
X:https://x.com/miyazawa_consul
公式LINE:https://lin.ee/qTwV4Hg

宮澤駿 | ピュアグロース株式会社 pure-growth.co.jp
整骨院・整体院・治療院経営チャンネル 経営の悩みを、言語化する場所。 「この判断、合ってるのか…?」 「もっといいやり方があるはずなのに、見つからない」 「技 youtube.com
Instagram Create an account or log in to Instagram - Share what you're www.instagram.com
Threads • Log in Join Threads to share ideas, ask questions, post random thoug www.threads.com
Facebook www.facebook.com

※本レポートに記載のデータは、長野県柔道整復施術所名簿(令和7年10月1日現在)、衛生行政報告例(厚生労働省)、長野県統計情報、各種求人媒体等の公開情報を基に集計・分析したものです。記載の施術所数・競合密度等は推計値を含みます。

宮澤駿

この記事の監修者

宮澤 駿ピュアグロース株式会社 ヘルスケア事業本部 本部長

株式会社船井総合研究所で12年間、整骨院・治療院業界のコンサルティングに特化し、成功事例企業を多数輩出。業界のM&Aにも携わり、部長として社内マネジメントも経験。「お客様の純粋な成長」を掲げるピュアグロースにて、2026年ヘルスケア事業本部を立ち上げ。

プロフィールを見る →
無料経営相談はこちら →← コラム一覧へ戻る
💬 個別相談・ご質問も受付中!
無料経営相談LINEで相談
限定配信の登録はこちら! 個別相談・ご質問も受付中!
LINEで申し込む